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by murkhasya-garva
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<新京極カルト&ミステリー 愛と幻想の映画案内>幻の湖

「幻の湖」(1982)
<新京極カルト&ミステリー 愛と幻想の映画案内>幻の湖_b0068787_2521691.jpg
最近は旧作、マイナー作品ばっかり観てます。ばっかり、でもないです。確実に映画の本数は減りました…。卒業に向けて勉強中なので、今しばらくご辛抱ください。

人はこの作品を何と名付けるだろう。ロード・ムービー?女優・南條玲子のための作品?大スペクタクルロマン?観光映画?それともカルトSF?「幻の湖」は本当にたくさんの要素を持った作品だ。何でもやろうとする無謀な大風呂敷の広げ方に、失笑することも何度か。


滋賀。滋賀といえば琵琶湖。そして雄琴。そんな有名な観光名所(?) を舞台に、本作は始まる。琵琶湖の沿岸を、愛犬のシロとひたすら走り続ける女性、道子。彼女はソープランド「湖の城」で、小谷城という部屋を担当する“お市”という従業員でもある。取ってつけたような、出来すぎのキャラクターが本作の主人公である。

ランニングの途中、お市は森の中で笛を吹く男に出会う。男の奏でる歌は、お市が何度もどこかで聴いたことのあるものだった。運命の出会い、そう思って名も知らない男とまた会う約束をするのだった。
物語は、何者かによって愛犬を殺されるところから急展開する。浮かび上がる犯人、復讐心に燃える道子。彼女は得意の走りで犯人を追う…!

ストーリーラインこそ破綻はしていないのだけど、何しろそれぞれの設定があまりにも唐突である。マイナーカルト作品によくある、異常なこだわりすら見える。この作品では、その情熱が彼女のランニングと滋賀の観光に向けられている。一体、誰が何のためにこんな作品を?
とはいえ、彼女のランニング姿も、観光名所もそうとうに美しい。

南條玲子は走る。本当によく走る。画面に映っている時だけ走っているにしても、その距離はけっこうあるだろう。実際にスタッフにはランニング指導までいるほどの念の入り用である。そして指導まで受けた彼女のランニングは、その後に続くストーリーの上で、彼女自身の原動力になっているようにも思われる。

愛犬を殺した者への復讐心、職場でもためらうことなく自分の意見を言う力、そして時代を超えて運命の君に出会おうとする想い、それらは彼女のパワーによるものだ。冷静に考えれば、ここまで執念を燃やす姿は異常ですらあるけど、そこは「ランニングをしてきた彼女はとにかくすごい!」で済ませてもあまり問題ないだろう。

滋賀という地に身を置いて、身も心も育んできた道子。燃えんばかりの執念を持つ彼女の周りには、負けじとスケールの大きいキャラが次々と現れる。時代を超え、空間を越え、作品のジャンルすら越えた型破りでスケールの大きい作品である。
普通だったら難しい展開も軽々とスルーしていくストーリーは、ある意味突っ込みどころ満載だが、それ以上に観る者を引っ張っていってくれることだろう。
一見の価値あり。すんごいです。
by murkhasya-garva | 2006-12-07 02:55 | 映画