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by murkhasya-garva
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≒森山大道

「≒森山大道」(2001)
≒森山大道_b0068787_1036825.jpg
≒(ニアイコール)シリーズの第2弾。でも今なぜ森山大道を上映?!上映場所の性格にもよるのだろうか。カルティエ=ブレッソンに続き、写真家を扱ったドキュメンタリーです。次は中平卓馬をシネ・ヌーヴォで。
森山氏は「やわらかい生活」のカメラマンも担当していたそうです。


ファインダーをのぞかない独特の撮影方法や、本人以外は立入禁止の暗室での作業など、約20の細かいトピックスに分けられた貴重な映像が、断片的に紡がれていく。また、森山自身のロングインタビューも収録。

もらいもののコンパクトカメラを片手に新宿をうろつく森山氏。およそ想像していたカメラマンの姿とは違う。なぜコンパクトカメラなのか。ファインダーを覗き構図を作る瞬間に「何か違って」しまう、と彼は言う。そして撮る人々が警戒しないから、とも。色々な理由が語られるが、あの一種のラフスタイルで撮られる写真でも、世界的に高い評価を受けるということが何より意外だった。

むろん、彼のスタイルはパフォーマンスではない。彼にとって必要だからこそ、あのスタイルがとられるのだろう。とはいえ、周囲の評価は彼をそうさせない。ブレボケ写真―彼の作品を「洗練と土着」という言葉で表現される。次第に身構え、自分のスタイルに囚われる森山氏。彼は一時期低迷期に入る。

後半、デジタルカメラを手に一日中町を回る彼の姿が映る。新しい機械を楽しそうに使う森山氏は少年のようでもあり、また彼が写真の世界の住人だと確信させるシーンでもある。

カルティエ=ブレッソンのように、「撮る」ことに真正面から取り組み、絵画的な美しさを兼ねた作品を作り出す人ではないと思う。彼の独自のスタイルは、「対象物に切り込むことのできない彼の弱さ」なのかもしれない。しかし、彼の取る写真には、自身が極言するような“肉眼レフ”の生々しさ、対象物に迫るような息吹が感じられる。

コントラスト、そして灰色の部分が彼の魅力だと荒木惟経氏は言う。“グレイ”ト・フォトグラファー森山。氏の作品には、自身の繊細な魂が映りこむ。
by murkhasya-garva | 2006-12-03 10:40 | 映画