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by murkhasya-garva
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電撃BOPのセクシーマザーファッカーズに!!

「電撃BOPのセクシーマザーファッカーズに!!」(2006)
電撃BOPのセクシーマザーファッカーズに!!_b0068787_1191451.jpg
チラシ、いやタイトルからただならぬ気配。今秋「ドッグ・デイズ」と並んで絶対に観にいきたかった作品です。予期せず現れた島田角栄監督からサインをもらえて満足。千葉・東葛国際映画祭で審査員特別賞受賞。大阪はシネヌーヴォにて12/1まで上映しています。


喧嘩で500戦無敗を誇る最強のパンクス岡島、ヤクザ狩りで世直しを行う活動家の虎吉、暴力とロックンロールが人生の全てであるヤクザの藤北。まっとうな社会に目を背け、独自の道を歩む3人は、様々な因縁のもとに互いを追い掛け回す。やがて彼らを壮絶な運命が襲う…

シネヌーヴォでそれは一際異彩を放っていた。やけに長いタイトル、60年代を思わせるサイケデリックなデザインのチラシ、それが『電撃BOPのセクシーマザーファッカーズに!!』。裏の作品解説もあまり意味が分からないけど、何だか並々ならぬパワーと情熱がビンビン響いてくる。ここまで毛並みの違う作品、最近のミニシアターにもない!!

本作は、商業ベースの映画群に正面から反旗をひるがえすが如く、「撮りたいものを撮る、低予算が何だ!」と攻めてきます。以前観たATG映画、とくに若松孝二監督の「天使の恍惚」にも似ている。いやたしかに暴力シーンもヌルいし、特別技術もどうってことない。アフレコも口と合ってない。しかし、それを補って余るほどの活力がある。出演者たちは生き生きとして、作品全体からは無骨ながらも強いメッセージがあふれてきます。

それに監督自身の、名作や名匠たちへの憧れにも似た純粋な想いが伝わってくるのです。かつてのモノクロ作品のパワーを信じ、虎吉にはゴダールをダチだと言わしめる。「鬼が来た!」や「シン・シティ」にも似たカラーの虹や血しぶきも印象的です。ある意味では模倣とオマージュの上に成立している作品ですが、一方で簡単に模倣を許さない独自のパワーがあることも事実です。

独自のパワーとはつまり、本作のテーマでもある“Rock’n Roll”、そして大阪というローカル性。大阪の持つ荒々しいまでの土着のエネルギーがロックという表現手段に出会い花開く時、ヒッピーたちがかつて(LSDで)幻視した宗教性や「世界平和」への願いが浮かび上がるのです。時代を超えて現れたロックの愚直なまでの姿勢こそが成し得る技ではないでしょうか。

それを踏まえれば開けっぴろげで猥雑な下ネタも暴力シーンも、驚くほどにピースフルなのです。登場人物が一人も死なないのがいい例です。性別はあらゆる手段で超えられ、いったん“個体”に切り離された人々は同性愛、いや同種愛とも言うべき営みによって関係性を取り戻していきます。あくまで地に足をつけ続ける者たちの無軌道で無鉄砲な姿は、腹を抱えて笑えると同時に感動的でもあります。

回想/妄想シーンで披露される数々の小ネタ、無造作に飛び出す無数のメッセージ。この荒削りな作品は、言うなればエネルギーの塊です。大阪という限られた空間から出ず、また猥雑な人間たちを映すことで真理を描こうとする監督の姿勢に潔さを感じます。
ライブハウスで聴くロックの生演奏のような衝撃を受ける作品。
こういうパワフルな映画が大好きです。
by murkhasya-garva | 2006-11-21 11:11 | 映画