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by murkhasya-garva
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<UKオールスターズ!キンキー・ナイト>トレインスポッティング

「トレインスポッティング」(1996)
<UKオールスターズ!キンキー・ナイト>トレインスポッティング_b0068787_16165792.jpg
さてもう1週間以上前の話、<UKオールスターズ!キンキー・ナイト>が10月28日に催されました。京都映画祭で4本観た後に猛ダッシュでみなみ会館へ。無事オールナイト貫徹いたしました。今回、体力ギリギリまで映画を見続けると、トリップにも似た恍惚感に包まれることが判明!!





ヘロイン中毒のレントンは、仲間たちと愉快でデタラメな日々を過ごしていた。ロンドンで仕事を始めたものの、仲間たちのせいで結局クビに。そんなところへ、売人から大量のドラッグを売りさばく仕事を持ちかけられ…

映画漬けの日々を過ごすと、もう映画なしではいられないカラダになるようです。みなみ会館のシートに座ったとき、本気で「このまま一生映画を観続けたい…」と思ってしまいました。一時の気の迷いであると信じたいですね。映画ジャンキーに着実に歩を進めているようですが、オールナイトの1本目はなんと、ジャンキー達の青春を描いた有名作品。本作は2度目の鑑賞となります。

薬物中毒者がストーリーの本筋にいる作品といえば、「レクイエム・フォー・ドリーム」。ごく普通の人々が無自覚のまま薬物にハマり、妄想を生きる人々を絶望的な視点から描いていました。

しかし、本作はまさに正反対。自分たちがダメだということ、その延長線上に薬物があることを皆自覚している。薬物の高揚感、幸福感が幻想であることを、身をもって熟知しているのです。そして、彼らが取りつかれているのは薬物ではなく、若者特有の怒りや欠乏感なのでしょう。

もっとも本作の主人公たちは、スコットランドの抑圧された文化の中で生きてきたという背景があります。スコットランドがイングランドの属国扱いをされていること、自分たちのクソみたいなヤク漬け生活、そんな気の滅入るもの全部から逃れるために薬物は必要だった。彼らの持つのは苛立ちや焦りだったり、やけに冷めた視点だったり、さらには将来の幸福への飢えだったりするのです。

そんな彼らの体験するトリップ映像もまた面白い。色調が明るく好印象なのもあるんですが、皆いい感じでイっています。夢うつつで目が覚めたり、カーペットの中に沈み込んだり。禁断症状も確かにキツイのですが、現実と妄想の境目がはっきりしているため、コミカルにも見えます。
(「レクイエム~」ではこれが無かった。境目が意図的に取り外されていたんですね。)

また、レントンの仲間たちも一人ひとりのキャラがよく立っている。ケンカ好きのベグビー、抜けているスパッド、…。よくつるむ悪友たちというだけでなく、彼らは同世代の人物のパターンを象ると同時に、レントンが「そうなるかもしれなかった」存在でもあるでしょう。将来への飢えを抱える彼にとって、彼らはまた「克服すべき」存在ともなります。

レントンの冷静で回想的な語りがクッションとはなりますが、この「痛さ」は薬物を経験していなくとも共感するものがあります。「ミリオンズ」も好きですが、本作がダニー・ボイルの傑作。
by murkhasya-garva | 2006-11-08 16:18 | 映画