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by murkhasya-garva
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<第五回京都映画祭>夜の女たち

「夜の女たち」(1948)
<第五回京都映画祭>夜の女たち_b0068787_10421779.jpg
10月27日、祇園会館にて2本目の鑑賞作品。溝口健二の監督によるもの。大阪の天王寺や阿倍野の荒廃した街角を舞台に、街娼の人々の生態とエネルギーを描き出している。溝口自身がこの作品によってスランプから抜け出したといわれる。




敗戦直後の大阪。夫が戦死し、子を結核で亡くした房子(田中絹代)は路頭に迷い、闇屋の栗山(永田光男)の妾となる。しかし実の妹夏子(高杉早苗)も栗山と関係を持ったことを知り、房子は女一人で行きぬくため、夜の盛り場で街娼となった…。

溝口健二の作品を数本見て彼の作品について語る、と言うのはおこがましい話ですが、「祇園の姉妹」といい「瀧の白糸」といい、どうも共通点が多い気がするのです。ここは既に述べた点なので割愛しますが、特に「祇園の姉妹」に似ている。ラストで自分の職業への恨みを叫ぶところなど、もうそのまま。監督の倫理観が押し出されているような作品です。

とはいえ、当時を活写した臨場感ある映像にやられてしまいます。戦後まもなく、壊れた建物や瓦礫がそこらじゅうに散らばっている風景。ケンカ追いはぎ何でもありの、物質的にも精神的にも荒廃した社会のホコリっぽさがよく現れているのです。その中で懸命に生きる術を見出そうとする女性たち。醜女の強さというのか(失礼)、エネルギッシュさが印象的です。

本作は、房子が義妹の久美子を街娼の道から救おうとするシーンで、テーマを一気にあぶりだします。教会の焼け跡、聖母マリア像の前で泣き伏せる女たち。街娼をする女性の救いのなさを訴えるという意味では、これほど強烈なものはありません。しかし、純潔協会の女性をシバいておいてこれはないだろう、と思うのですが…
音質、画質は悪くともそこから立ち上ってくるパワーは本物です。
田中絹代似のハイヒールモモコに一票。
by murkhasya-garva | 2006-10-31 10:43 | 映画