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by murkhasya-garva
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<第五回京都映画祭>三朝小唄

「三朝小唄」(1929)
<第五回京都映画祭>三朝小唄_b0068787_050118.jpg10月25日、京都ドイツ文化センターにて鑑賞。いやあ人がいるいる…。牧野省三監督の手によるサイレント映画。邦画のサイレントなんて初めて。しかも今回は映像に活弁が録音されており、違和感と言うよりなかなか新鮮な体験ができました。

村一番の器量よし、お久は村の青年たちの関心の的。村祭りに来た彼女が青年に追い回されていると、東京から三朝(みささ)温泉に逗留に来ていた若い画家と出会った。村の青年とは違って、静かで物腰の穏やかな画家の姿にお久は次第に心引かれていく…。


無声映画はなかなか観る機会にめぐりあえません。何かの催し物がない限り、スクリーンでの鑑賞など叶わないのです。チャップリンの「街の灯」をオーケストラ付きを観て以来。無声映画には、日本では活弁を当てるというのが多かったようです。本作は、上映中にスクリーン脇で歌手が主題歌を歌うという「小唄映画」の一つでした。今回はもちろん全て録音されているのですが。

無声映画では、その映像だけという平板さゆえか、役柄を明確にする必要があるようです。ピエロ役の男は身振りが激しく、思い切ったアクションで笑わせてくれる。また主人公たちは気持ち悪いほどに真っ白な顔で、悪人はいかにも悪人面といった色黒。そういえば「街の灯」でも、これに似た演出がされていました。

本作は三朝小唄をベースにしたストーリー。東京からやってきた青年画家と村娘との恋…なんて素朴なんだ。登場人物は予想通りの行動をするし、予定調和的に悲恋へとなだれ込みます。「情」を重んじる日本人の気質ゆえ、彼らは自ら残酷な現実へと身を投じるのです。ハリウッド映画に毒された者には、何故もっと自分の幸せに貪欲にならないのか不思議でなりません。

古き良き昭和初期の香りのする作品です。なかなか貴重なものを観ることができました。
by murkhasya-garva | 2006-10-28 00:51 | 映画