<アリス&ザ・ワンダーランド Night>親指トムの奇妙な冒険
2006年 08月 02日
「親指トムの奇妙な冒険」(1993)
これまた不思議なパペットアニメーション。
生身の人間を巻き込んで奇妙な奇妙な世界を形作ってゆきます。遺伝子操作という時事的な話題や、倫理的、人種差別的な問題にも言及した、きわめて野心的な作品だといえるでしょう。
デイヴ・ボースウィック脚本・監督。
前回紹介した「アリス」では、幻想と現実が区別される表現がなされていましたが、この作品ではその境目がないのです。生身の人間もコマ撮りにされ、人形と同じぎこちなさで動く。とはいえ、人形たちもかなり滑らかな動きをします。見ているうちに、人形と人間の区別がつきにくくなっていくようです。
親指トムは優しい人間の両親の間に生まれ、可愛がられます。「異物」であるはずの小さなトムを、何の抵抗もなく受け入れる両親の無邪気な心温かさ。両親の家庭環境の描写には、多少差別的な視点があるようにも感じますが、基本的にここで描かれる「異物」との関わり方は、理想的だといえます。
しかし、謎の男に突然連れ去られるトム。彼を実験体に使おうとするのです。そこから、トムたちには様々な受難が待ち受けます。「人間」対「親指サイズの人間」、「親指サイズの人間」対「科学で生み出された異形の生命体」と、お互いに相手を「異物」とみなして敵視し、攻撃するのです。この止むことのない差別の連鎖からは、人間の負う、深い業を思わずにはいられません。
何だか社会派なテーマ…でも、ここでぼんやりしているとラストで不意打ちを食らいます。ぼくも、一体何が起きたのかしばらく見当が付きませんでした。ここは恐らく、監督のテーマが最も込められているところです。“いかなる生き物であれ、生命は全て等質である”ことを、皮肉たっぷりに言っているようです。
人間はパペットのように、パペットは生き物のように映し出される、無機と有機の中間をゆく奇妙な感覚。
奇想天外ながらも、深いテーマを隠しつつ進むストーリー。
そして彼らのコミカルな動き、特にトムの奇妙ながらも、何ともいえない可愛らしさは必見。
これまた不思議なパペットアニメーション。
生身の人間を巻き込んで奇妙な奇妙な世界を形作ってゆきます。遺伝子操作という時事的な話題や、倫理的、人種差別的な問題にも言及した、きわめて野心的な作品だといえるでしょう。
デイヴ・ボースウィック脚本・監督。
前回紹介した「アリス」では、幻想と現実が区別される表現がなされていましたが、この作品ではその境目がないのです。生身の人間もコマ撮りにされ、人形と同じぎこちなさで動く。とはいえ、人形たちもかなり滑らかな動きをします。見ているうちに、人形と人間の区別がつきにくくなっていくようです。
親指トムは優しい人間の両親の間に生まれ、可愛がられます。「異物」であるはずの小さなトムを、何の抵抗もなく受け入れる両親の無邪気な心温かさ。両親の家庭環境の描写には、多少差別的な視点があるようにも感じますが、基本的にここで描かれる「異物」との関わり方は、理想的だといえます。
しかし、謎の男に突然連れ去られるトム。彼を実験体に使おうとするのです。そこから、トムたちには様々な受難が待ち受けます。「人間」対「親指サイズの人間」、「親指サイズの人間」対「科学で生み出された異形の生命体」と、お互いに相手を「異物」とみなして敵視し、攻撃するのです。この止むことのない差別の連鎖からは、人間の負う、深い業を思わずにはいられません。
何だか社会派なテーマ…でも、ここでぼんやりしているとラストで不意打ちを食らいます。ぼくも、一体何が起きたのかしばらく見当が付きませんでした。ここは恐らく、監督のテーマが最も込められているところです。“いかなる生き物であれ、生命は全て等質である”ことを、皮肉たっぷりに言っているようです。
人間はパペットのように、パペットは生き物のように映し出される、無機と有機の中間をゆく奇妙な感覚。
奇想天外ながらも、深いテーマを隠しつつ進むストーリー。
そして彼らのコミカルな動き、特にトムの奇妙ながらも、何ともいえない可愛らしさは必見。
by murkhasya-garva
| 2006-08-02 20:21
| 映画