ナイト・ウォッチ/NOCHNOI DOZOR
2006年 04月 22日
「ナイト・ウォッチ/NOCHNOI DOZOR」
ロシア発、「マトリックス」を超える映像を引っさげて、ダークファンタジー3部作の第1章がやってきた。3部作にかける思いは人それぞれだろうけど、今回は「マトリックス」を引き合いに出すのだから、期待度が高まったのは間違いないですね。
3部作の形式をとる映画は腐るほどあります。「マトリックス」ほど近年で次回作を期待させた作品はないし、かつての名作「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「スターウォーズ」を映画の最高峰とする人も少なくない。「ロード・オブ・ザ・リング」は最近で最も成功した3部作といわれます。しかし一方では名作が取る甘美なワナでもあります。第一作が高い評価を受けてその勢いで続編を作り、「自らうち建てた記念碑を光の速さでぶち壊した」(榎本俊二「映画でにぎりっ屁!」)作品もあるくらいですし。
では本作品はどうか。マトリックスと同じくらいの可能性を感じさせる映像方法。ぼくの目を引いたのは字幕でした。英語字幕に色が付き、溶け、スライドし、踊ります。またスピードの緩急を駆使して見所を作り、息もつかせぬカメラワークで目を回させ、その情報量の多さで圧倒します。実際に2004年アカデミー賞外国語映画賞にノミネート、東京国際ファンタスティック映画祭2005でクロージング特別作品として、熱狂的な反応を呼んだそうです。
しかし一般ではどうも評判が悪い。ある種の退屈さというか、つまり映像効果だけが一人歩きしているようなのです。確かに作中では驚くほどのCGが施されていますが、それが何なのか、本筋にどう関わるのかがはっきりしない。特にオープニングでは、豹になる女、「くもQ」、老女の魔術など分からないことだらけ。各エピソードでもそれがコメディ的なものなのか、ストーリーに関わるイベントなのかを判断することができません。観る側としては「すごい、けど退屈」としか言えないのではないでしょうか。
このことは、逆に言えば裏設定が豊富だということでもあります。だからこそ次回作以降に期待できるのですが、これ1本では情報があまりに断片的で、一般的な「分かりやすさ」を拒絶するようにも見えるのです。そして、結果的には、一般受けするエンターテインメント性よりも重箱の隅をつつくような裏設定に心ときめかせるようなカルトファンを生み出すことにもなりかねません。「くもQ」なんてその最たる例です。
映像の斬新さとは裏腹に、その分かりやすいまでの世界観やまったく新鮮味に欠けるストーリー展開、そしてアンハッピーエンド、これらがなべて作品全体の魅力を下げているように思います。この作品の背景や技術の高さを理解できる人、本国の映画ファン、そして異常な愛情を注ぐことのできる人ならば大いに楽しめることと思います。
しかしそんな作品がなぜここまで宣伝され、注目されたのか。それは、端的にそして極端に言えば、「ロシアがマトリックスばりのSF超大作を手がけたという話題性」に半ばヒステリックに反応したからだ、ということにはならないでしょうか。
ともあれ、次回作、次々回作に大いに期待しますか。
ロシア発、「マトリックス」を超える映像を引っさげて、ダークファンタジー3部作の第1章がやってきた。3部作にかける思いは人それぞれだろうけど、今回は「マトリックス」を引き合いに出すのだから、期待度が高まったのは間違いないですね。
3部作の形式をとる映画は腐るほどあります。「マトリックス」ほど近年で次回作を期待させた作品はないし、かつての名作「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「スターウォーズ」を映画の最高峰とする人も少なくない。「ロード・オブ・ザ・リング」は最近で最も成功した3部作といわれます。しかし一方では名作が取る甘美なワナでもあります。第一作が高い評価を受けてその勢いで続編を作り、「自らうち建てた記念碑を光の速さでぶち壊した」(榎本俊二「映画でにぎりっ屁!」)作品もあるくらいですし。
では本作品はどうか。マトリックスと同じくらいの可能性を感じさせる映像方法。ぼくの目を引いたのは字幕でした。英語字幕に色が付き、溶け、スライドし、踊ります。またスピードの緩急を駆使して見所を作り、息もつかせぬカメラワークで目を回させ、その情報量の多さで圧倒します。実際に2004年アカデミー賞外国語映画賞にノミネート、東京国際ファンタスティック映画祭2005でクロージング特別作品として、熱狂的な反応を呼んだそうです。
しかし一般ではどうも評判が悪い。ある種の退屈さというか、つまり映像効果だけが一人歩きしているようなのです。確かに作中では驚くほどのCGが施されていますが、それが何なのか、本筋にどう関わるのかがはっきりしない。特にオープニングでは、豹になる女、「くもQ」、老女の魔術など分からないことだらけ。各エピソードでもそれがコメディ的なものなのか、ストーリーに関わるイベントなのかを判断することができません。観る側としては「すごい、けど退屈」としか言えないのではないでしょうか。
このことは、逆に言えば裏設定が豊富だということでもあります。だからこそ次回作以降に期待できるのですが、これ1本では情報があまりに断片的で、一般的な「分かりやすさ」を拒絶するようにも見えるのです。そして、結果的には、一般受けするエンターテインメント性よりも重箱の隅をつつくような裏設定に心ときめかせるようなカルトファンを生み出すことにもなりかねません。「くもQ」なんてその最たる例です。
映像の斬新さとは裏腹に、その分かりやすいまでの世界観やまったく新鮮味に欠けるストーリー展開、そしてアンハッピーエンド、これらがなべて作品全体の魅力を下げているように思います。この作品の背景や技術の高さを理解できる人、本国の映画ファン、そして異常な愛情を注ぐことのできる人ならば大いに楽しめることと思います。
しかしそんな作品がなぜここまで宣伝され、注目されたのか。それは、端的にそして極端に言えば、「ロシアがマトリックスばりのSF超大作を手がけたという話題性」に半ばヒステリックに反応したからだ、ということにはならないでしょうか。
ともあれ、次回作、次々回作に大いに期待しますか。
by murkhasya-garva
| 2006-04-22 23:50
| 映画