卍 まんじ
2006年 04月 14日
「卍 まんじ」(2003)
雨上がりのレイトショーだというのに結構な人数が来ていて、座席の8割以上が埋まっていました。一番後ろに座ってしまい、足が伸ばせず少々難儀しました…。
何一つ不自由なく暮らす園子(秋桜子)は、美術学校で妖艶な美しさを放つ女性、光子(不二子)に出会う。光子は園子に相談を持ちかける。それは、自分の縁談を破談にするために、2人が同性愛であるかのごとく振舞ってくれないかと…
谷崎潤一郎によって1928(昭和3)年に発表された問題作。「禁断のエロティシズム」として有名な作品だそうです。過去に増田保造監督が若尾文子と岸田今日子主演で実写化した(1964)のを皮切りに、横山博人監督の樋口可南子と高瀬春奈主演(1983)、リリアナ・カバーニ監督による西ドイツとイタリアの合作(1983)、服部光則監督の坂上香織と真弓倫子主演(1988)と数多く作られています。
さて、この作品の監督はというと、あのカルト作品「恋する幼虫」(2003)を作った井口昇。それを知らずに行ったものだから大変な目に遭いました。ポスターのデザインも、赤と黒を基調に白く浮き上がる妖艶な2人の女性。谷崎作品だから耽美系で妖艶、とすっかり思い込んでいました。
やられた・・・!
上映開始5分後、猛烈にいやな予感が頭の中をめぐり始めました。女優たちの愚にもつかない大根演技、あからさまなほどのオーバーアクションや効果音、なんのひねりもない演出効果皆無の映像、ところどころに挿まれるズレた小ネタ。そのどうしようもない映像にただ、頭の中は「?」でいっぱいになり・・・。
そこで思い至ったのが、ピンク映画。こんなのがあったような気がする。そしてこれはあの衝撃的作品、「恋する幼虫」に似ている!!!あとで資料を確認して「やっぱりね~」という感じでした。しかし、それに至るまでが本当に辛かった。あの超ド級のセンスに笑っていいのか判断できないんですから。
しかし、時間が経つにつれ館内で忍び笑いが聞こえてきます。途中からやってきた若者は早々と声をあげて笑っています。潔いもんだ。登場するとギャグにしかならない荒川良々や、下女の老婆が突然顔を出すシーンでは「ぶはっ」、ほぼ失笑の渦。このチープさは、もう笑うしかない。それにしても秋桜子のトンデモ演技は、必見に値します。
いや確かに、真正面からこの作品を評価しようとすると思わず酷評にむかいます。しかし、逆にこの徹底的なまでのチープさで谷崎潤一郎という文豪の作品を実写化するという行為は、美という夢物語に陶酔する人々を後ろから思い切り突き飛ばすようなものではないでしょうか。実際はこんなものだ、と。
考えてみれば同性愛に止まらない歪んだ愛を繰り広げる作品です。井口監督はきわめて一般的かつ冷笑的な視点で文豪の名(迷?)作を笑い飛ばすことのできた人物かもしれません。
はっきり言いましょう。この作品はヌけない。よほど飢えてない限り(笑)。井口監督は当時何を考えていたのかは知りませんが、この誇張された効果音に彩られた露骨なまでの性描写では、むしろ人間の戯画化された滑稽なさまを笑うしかないんです。ピンクならではの艶っぽさがないとはいいませんが。
「恋する幼虫」にはまった人、荒川良々のファン、普通の映画じゃ物足りない人、そして谷崎作品の愛読者にもこの作品は観てもらいたい。ピンク映画監督が切り取る文豪の名作、失笑の渦に巻きこまれること必至です。すでにDVD化されてますので、自宅鑑賞をお楽しみ下さい。
雨上がりのレイトショーだというのに結構な人数が来ていて、座席の8割以上が埋まっていました。一番後ろに座ってしまい、足が伸ばせず少々難儀しました…。
何一つ不自由なく暮らす園子(秋桜子)は、美術学校で妖艶な美しさを放つ女性、光子(不二子)に出会う。光子は園子に相談を持ちかける。それは、自分の縁談を破談にするために、2人が同性愛であるかのごとく振舞ってくれないかと…
谷崎潤一郎によって1928(昭和3)年に発表された問題作。「禁断のエロティシズム」として有名な作品だそうです。過去に増田保造監督が若尾文子と岸田今日子主演で実写化した(1964)のを皮切りに、横山博人監督の樋口可南子と高瀬春奈主演(1983)、リリアナ・カバーニ監督による西ドイツとイタリアの合作(1983)、服部光則監督の坂上香織と真弓倫子主演(1988)と数多く作られています。
さて、この作品の監督はというと、あのカルト作品「恋する幼虫」(2003)を作った井口昇。それを知らずに行ったものだから大変な目に遭いました。ポスターのデザインも、赤と黒を基調に白く浮き上がる妖艶な2人の女性。谷崎作品だから耽美系で妖艶、とすっかり思い込んでいました。
やられた・・・!
上映開始5分後、猛烈にいやな予感が頭の中をめぐり始めました。女優たちの愚にもつかない大根演技、あからさまなほどのオーバーアクションや効果音、なんのひねりもない演出効果皆無の映像、ところどころに挿まれるズレた小ネタ。そのどうしようもない映像にただ、頭の中は「?」でいっぱいになり・・・。
そこで思い至ったのが、ピンク映画。こんなのがあったような気がする。そしてこれはあの衝撃的作品、「恋する幼虫」に似ている!!!あとで資料を確認して「やっぱりね~」という感じでした。しかし、それに至るまでが本当に辛かった。あの超ド級のセンスに笑っていいのか判断できないんですから。
しかし、時間が経つにつれ館内で忍び笑いが聞こえてきます。途中からやってきた若者は早々と声をあげて笑っています。潔いもんだ。登場するとギャグにしかならない荒川良々や、下女の老婆が突然顔を出すシーンでは「ぶはっ」、ほぼ失笑の渦。このチープさは、もう笑うしかない。それにしても秋桜子のトンデモ演技は、必見に値します。
いや確かに、真正面からこの作品を評価しようとすると思わず酷評にむかいます。しかし、逆にこの徹底的なまでのチープさで谷崎潤一郎という文豪の作品を実写化するという行為は、美という夢物語に陶酔する人々を後ろから思い切り突き飛ばすようなものではないでしょうか。実際はこんなものだ、と。
考えてみれば同性愛に止まらない歪んだ愛を繰り広げる作品です。井口監督はきわめて一般的かつ冷笑的な視点で文豪の名(迷?)作を笑い飛ばすことのできた人物かもしれません。
はっきり言いましょう。この作品はヌけない。よほど飢えてない限り(笑)。井口監督は当時何を考えていたのかは知りませんが、この誇張された効果音に彩られた露骨なまでの性描写では、むしろ人間の戯画化された滑稽なさまを笑うしかないんです。ピンクならではの艶っぽさがないとはいいませんが。
「恋する幼虫」にはまった人、荒川良々のファン、普通の映画じゃ物足りない人、そして谷崎作品の愛読者にもこの作品は観てもらいたい。ピンク映画監督が切り取る文豪の名作、失笑の渦に巻きこまれること必至です。すでにDVD化されてますので、自宅鑑賞をお楽しみ下さい。
by murkhasya-garva
| 2006-04-14 01:34
| 映画