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by murkhasya-garva
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ヘイズ/HAZE-original long version

たくさんの映画を観ました。観た作品は全部upしたいのですが、それまで僕の根性が続くかどうかも分かりません。出来るだけ短く簡潔に、そして要点は確実に押さえた文章を目指します。特に未見の方が観にいきたくなるような、しかも観た方に自分の考えが明瞭に伝わるような文章を書きたいと思っています。是非ともダルがらずに覗きにいってください。

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「ヘイズ/HAZE-original long version」
「鉄男」「ヴィタール」を手がけ、ほか多数の作品に出演する塚本晋也監督のスリラー。05年8月ロカルノ国際映画祭コンペティション部門でワールドプレミア、各国の映画祭で絶賛。



目を覚ますと、男は肉体の自由を苛むような狭い空間に置かれていた。なす術もなく傷つき、ただ限られた空間を逃げ出そうと試みる彼を待っていたのは悪意に満ちた地獄の数々…

閉所恐怖症でなくとも、この極度に狭い空間は見ているだけで辛いでしょう。男のパニックがひしひしと伝わってきて、何とも恐ろしい。限定された空間での、避けられない肉体の痛みがビリビリ伝わってきます。特に、パイプを噛んだ体勢から逃れようと体をずらすシーンで、歯とパイプが擦れる。軋る。鳥肌ものです。。
体感する地獄、とは本当にこの作品のことを言うんでしょう。

痛みや恐怖といったネガティブな感覚を引き立たせるための配慮が本当に細やかで…。肉体の「痛み」を真正面から撮られるとこんなにも辛いのか、と痛感します。コンクリートの無機的な雰囲気や、荒い息遣い、どこからか鳴り響く轟音。この空間に男の感覚が充満しているような表現です。
そしてこれらを引き立たせるために、設定は本当にシンプル。男や女には名も記憶もなく、この空間が何のために作られたのかも明示されません。

誰の仕業かも目的も分からないと、かえって全体の象徴性に意識がゆきます。どうも理解できないラストからも、恐らくあの空間が彼らの「世界」であり、そこに満ちる悪意はあの閉鎖空間そのものなのでは?と思い至ります。
さらにあの空間が現代社会の表象とも取れます。だとすると、それまでの流れへのイメージがにわかに息づいてきますね。

この作品のタイトルはHAZE=靄(もや)。恐らく、HAZEは空間に漂う彼の意識のことで、また「ヘイズ」=閉図(←お粗末)のようです。また予告編からは頭文字のHが多くの意味を含んでいるそうです。
HOPE(希望)、HOPELESSNESS(絶望)、HONESTY(誠実)、HIPOCRISY(偽善)・・・。さらにはHUMANなんてのも喩えているのでは?

作品のタイトルともなったHAZE(靄)に意識して観てみてください。息が詰まるほどの辛い中に何かが見えるかもしれません。
by murkhasya-garva | 2006-04-11 17:02 | 映画