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by murkhasya-garva
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ターネーション

「ターネーション」
ターネーション_b0068787_2357352.jpgぼくはよくよく映画の前評判に影響されやすいなあ、と気付く。今回もカンヌ、サンダンスが絶賛した、という鳴り物につられて観にいったクチです。安直といえば安直なんだけど。タイトルも興味深い。ターネーション:天罰、破滅、地獄、永遠の断罪。ここまで救いようのないタイトルの作品はいったいどんな内容なのか。


ジョナサン・カウエットが11歳から撮り続けてきた写真、自主映画、ビデオダイアリー、留守録メッセージ、ハリウッドのムービークリップ、ミュージックサンプル、これらをiMovieで編集したのがこの作品。自分の半生を、まさに肉薄して描き出す。自ら負う精神の病、母への愛、ゲイであること、己のルーツ。映し出された映像を目にする者は、何かしら心を揺り動かされるのではないだろうか。

予算をつぎ込んだものと違って、映像の美しさの点では確かにメジャー映画とは比較しようもないですが、ここでそんなことを問題にするのはナンセンスです。1人の人間の半生を目の当たりにする、という体験は考えているよりも強烈なものでした。それを現実のものとしたのはカウエットの編集能力、もとい「映画力」なのでしょうが、決して稀有とは言い切れない境遇が彼を締め付けていく様子は、見ていていたたまれなくなってきます。
(後半についてのみだけど・・・)
美しく、若くして精神の病を負った母。慈しむような視点から丁寧に映し出されます。息子が実家に戻ってきてくれたため、有頂天になり、無邪気な姿を見せる彼女が長い時間映りますが、本当に切ない思いにかられます。愛犬がただただ自分に愛を寄せるような感覚に襲われるのだけど、相手は人なのだからなおいっそう辛い。彼女の苦しみを癒してやることもできない。そんなやるせなさをも感じさせる、というのはうがった見方でしょうか。眠る母の傍に腰を下ろし、どこかに視線を向けるカウエットの姿はまた、自分の心のよりどころをひたすらに求める、孤独な心を映し出しているようです。

どことなく親和感を抱かせる作品。日本人の感覚とは多少違うようですが、彼の半生には共感できる部分が見出せるのではないでしょうか。
by murkhasya-garva | 2005-11-02 23:58 | 映画