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by murkhasya-garva
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河内カルメン

『河内カルメン』(1966)
河内カルメン_b0068787_0444934.jpg鈴木清順監督の作品が見たくなったんです。以前鈴木清順監督で見たのは『オペレッタ狸御殿』と、あと何か。どちらも意味不明にゴージャスでストーリーが見えなかったためしばらく敬遠していました。そこで京都みなみ会館では木村威夫特集を行っていて、『河内カルメン』(1966)、『けんかえれじい』(1966)、『刺青一代』(1965)、『肉体の門』(1964)、『馬頭琴夜想曲』(2006)の5本が挙げられています。



特に『けんかえれじい』が見たいんです。数年前、京都映画祭で『女番長ゲリラ』(1972)でつかみ合いのケンカを見て、すんごく面白かったのを思い出します。それに、北野武の『OUTRAGE』(2010)がそろそろ公開されるといいます。もう期待に胸がふくらみまくりです。

でも、今回は『河内~』と『馬頭琴~』を鑑賞。『河内~』はとても素晴らしかった。テンポのよさといい、野川由美子の美しい肢体といい、全体に流れる熱い情念といい、たまりません。野川由美子ふんする露子は河内から大阪へ、そして職や住処を変えるたびに姿が変わっていきます。きっぷのいい女の子からキャバレー店員へ。垢抜けなさが無くなって美しく咲いた華のように。かと思うとファッションモデルに転身し、さらには初恋の人と再開して慎ましやかな淑女になる。見事に変わっていくその姿、ともすればめまぐるしく変わるストーリーに振り回されそうになるのだけど、一貫して流れているのは露子という、女性の姿であり、情念だと思います。

随所にハッとさせられる演出がとても多く、こうくるか!と唸ってしまう。まずは最初の男・カンやんとの別れのシーンを挙げてみましょう。「カンやんが怒らへんかったらうち、出て行きづろなるやん」と露子が言うと、カンやんは背中を向けてぐっと押し黙り、一間おいて洗濯物を畳みながらわざわざ売り言葉を投げつけます。互いに情が移った者同士、ケンカ別れを演じながら涙を流す場面には胸打たれるものがあります。

他にもたくさん、思わずこちらが身を乗り出してしまうようなシーンがありました。作品全体の勢いのよさ、役者のエネルギーが直球で伝わってくるような作品です。めちゃめちゃ面白かった。こういう映画にはあまり言葉を加えるとやぼったくなるのが関の山なので、取りあえず未見の方は見ていただくとして、すでに見ている人はぜひ感想を教えて欲しいものです。
by murkhasya-garva | 2010-05-20 00:46 | 映画