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by murkhasya-garva
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ミシェル・ゴンドリーといえば、「エターナル・サンシャイン」(2004)が有名です。恋人を失った男が、彼女とのつらい記憶を削除してもらう話。主人公はしかし、記憶世界で削り取られていく彼女の記憶を失わないよう奔走します。その彼の記憶の中は現実と幻想が混ざり合い、その境目がはっきりしなくなる映像が特徴的です。新作の「恋愛睡眠のすすめ」はその流れを受け継ぎ、より幻想的なストーリーと映像になっています。オープニングは絵の具を撒き散らしたようなカラフルなシーン。渦を巻きながら広がっていく色を見ていると、まるで夢を見ているように思えてきます。

「恋愛睡眠のすすめ」(2006)は、夢と現実の区別が付かない青年・ステファンの恋物語。「エターナル~」では記憶と現実はいちおう、ちゃんと区別されていたのだけど今回は夢遊病のケがある男の世界です。夢を見ているあいだ現実で体も動くという夢遊状態。しかも彼は起きても頭の中で夢ビジョン。どこまでが現実なのか分からない。ゆったりと流れる音楽、淡くやわらかい色彩、その目くるめく映像を見つめていると、何だか全部が思い通りに行きそうな軽い全能感に包まれてきます。気持ちよ~くなれます。軽いトリップというやつですね。

b0068787_071768.jpg前2作品のように、独自性を強く押し出した作品を作るゴンドリー監督ですが、一方でドキュメンタリーを作ったりもします。「ブロック・パーティ」(2006)は、ラッパーのデイヴ・シャペルがブルックリンで黒人を中心とした無料コンサートを開催するまでの話です。カニエ・ウェスト、ローリン・ヒルなど有名な歌手がずらり揃い、それぞれの曲を披露してくれます。


本編はいわゆるブラック・ミュージックというアクの強いジャンルゆえ、個人的には少し食傷気味でした。でも、彼らの歌に現れる強烈なメッセージ性、渇望するほどの共同体願望は、観る者に確実に生命力を吹き込んでくれるようでもあります。

音楽ドキュメンタリーは数多く作られるけど、大抵は特定のグループや個人をあつかったもの。イベントがテーマなんてそう聞きません。本作は必要以上のメッセージを盛り込まずに、イベントという一夜の出来事の空気を忠実に活写します。そのため監督の独自性は極力抑えられ、インパクトに欠ける感はありますが、それでもしっかりと観客に「楽しさ」を伝えてくれるのが素晴らしいと思います。

そして今回4作品で最早期に作られたのが「ヒューマンネイチュア」。「恋愛睡眠~」「エターナル~」の監督の独自性と「ブロック~」のストーリー重視の間を行くような作品です。この3作品以前の、2001年に作られました。野性人に育てられた男・パフを森で見つけたネイサンとライラ。ネズミにテーブルマナーを教える実験をするネイサンは、パフに礼儀作法を覚えさせようとします。一方でネイサンはライラの体毛の濃さから関係が冷め、助手のガブリエルとの浮気を続けますが…

「自分をサルだと思いこんでいる男」「宇宙一毛深い女」「ネズミにテーブルマナーを教える博士」、この奇抜な設定でストーリーが組み立てられます。先がなかなか予想できない上、ラストはうまい具合に収束していく。最初から最後まで目が離せません。映像効果がどうというより、ストーリーのうまさが目立つ作品です。こういう新しい世界を見られる魅力があるから、映画を見るのがやめられないんです。

ミシェル・ゴンドリーは、突出した才能で勘客がたまらず魅了される、という監督ではありません。言ってみれば、一つの持ち味を活かし、それを中心にバランスの取れたものに仕上げてくるような監督です。今回のオールナイトも席の6、7割とけっこう埋まっていました。幅広くファンを獲得できる監督のようです。今後の作品が楽しみです。
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by murkhasya-garva | 2007-06-22 00:04 | 映画

渡辺文樹@大阪

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6/19、大阪府立青少年会館で、渡辺文樹監督の映画を見てきました。10:30から「腹腹時計」、13:00から「罵詈雑言」。彼の作品はいずれも過激な内容のため、一般の映画館では上映されていません。渡辺氏は各地の施設を使い、独自に上映会を行っています。また上映会が行われる地域ではたいてい、ゲリラ的に電柱などにポスターが貼られます。作品の未見の方もポスターを目にしたことがあるでしょう。目を疑うような過激なキャッチコピー。




初めて目にした小学生の時分、「彼女は便槽の腐乱死体を愛した」(だったか)、「ゲロ袋あります」などというコピーが「罵詈雑言」のポスターに貼られていて(↑の画像)、幼心に恐れおののいた記憶があります。

さて、「腹腹時計」はテロリストが天皇暗殺を図り、爆弾を使って攻撃しようとする内容。腹腹時計とは、「爆弾製造の地下出版物の名」だそうです。活動家・渡辺は渡辺監督自身が演じています。
映画としては(彼自身、謙遜して言うように)余りにつたない。役者は監督も含め、ダイコンです。もろ説明的な台詞回しの会話を無表情に棒読みするので、どこを強調したいのか分からない。ストーリーの伏線も読みづらく、いきなりとも思えるような場面転換。細かい設定も活かしきれず、まるで取ってつけたような印象しか受けません。
「いやあ、ひどいの見ちゃったなあ…」というのが見た後の率直な感想です。

そして「罵詈雑言」。1989年2月28日、福島県で起きた青年の変死事件の謎を、監督が究明すべく再現映像とともにドキュメンタリーとして制作しています。監督自身が「怒りをもって作った」と言うだけあって、内容は監督の猛烈なインタビューによる村の人々との苛烈な争いが映されます。こっちはすごい。ドキュメンタリーの生々しさがビリビリ伝わってきます。

1989年から5年後、監督は事件関係者に取材して回ります。教員住宅の便槽で見つかった男性の死体。事件は「のぞき」が目的の結果として結論付けられますが、その不可解な事件は、じつは他殺によるものではないかと監督は疑います。もし他殺なら、地域全体が…。
「あんた知っているんだろ。本当のこと言いなさいよ!」
「だから知らないって言ってんだろ!何カメラ撮ってるんだ。帰れ!」
というような苛烈極まるやり取りがインタビューする先々で起こります。よくこんなことをやるな、と圧倒されると同時に、このような特定の人々のプライバシーに直接関わるような問題である以上、一般公開は明らかに無理だと思わされます。

社会の暗部に対し常に問題意識を向け、告発を続ける渡辺氏はかなりの行動力を持った方であるのは間違いないでしょう。その行為が適当か否かは、ここで敢えて結論付けません。「腹腹時計」の内容は政治的に納得行かないものがあります。また「罵詈雑言」はアプローチの客観性に疑問があるし、そして門外漢である以上、いわゆる“事件の真相”を判断することは不可能だからです。
しかし、この作品群を単なるトンデモだと言い切るのではなく、この反体制という監督の視点をさらに批判的に捉えてみるのもいいんじゃないでしょうか。
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by murkhasya-garva | 2007-06-21 11:22 | 映画