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by murkhasya-garva
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<   2005年 12月 ( 10 )   > この月の画像一覧

親切なクムジャさん

「親切なクムジャさん」
b0068787_1613758.jpgパク・チャヌク監督作品の復讐三部作の第三作目。「オールド・ボーイ」「復讐者に憐みを」で人間の陰惨にも苛烈な本性をむき出しにした。今回は、子を奪われ、殺人の濡れ衣を着せられ13年も入獄した女性の復讐劇を紡ぎだす。主演はイ・ヨンエ。「宮廷女官 チャングムの誓い」「JSA」に出演。
多くの映画評では「三部作の中で最も美しく、残酷な作品」と言われているんだっけ?


この作品が「美しい」と評されている理由には、まず復讐の仕立て方にクムジャのこだわりが見えるところでしょうか。先に刑期を終えた女たちに協力を仰ぎ、綿密かつ周到に復讐の準備を行います。自分はそれまでの清楚なイメージを捨て、赤いアイシャドウ、黒いコートに身を包む。復讐者としての決意を見せるためなのか。でもそんな準備が多くて復讐自体が少々不自然に見えてしまいます。

そして2つ目の理由は、オープニングあたりで特に見られる映像や音楽の美しさでしょうか。悲痛に流れる弦楽の調べ。キャストが表示されるときに横から伸びる細長いツタ。クムジャが眺める目の前に下りる赤い格子。黒いコートに真っ白な雪。復讐に手を染めた者は‘黒’を宿し、純粋な想いを持つ者は‘白’に身を包む。配色のコントラストが鮮烈な印象を与えます。

3つ目には、主演のイ・ヨンエ本人の魅力でしょうか。復讐者として決意し、無表情に見つめるその眼は大きく見開かれる。刑務所から出たときの顔はどこにでもいそうな女性だけど、準備の段階を進めていくうちに美しさが増していくようです。けど他多くの俳優とは少し違い、どことなく親しみやすい顔立ちをしている。非の打ち所がなく端整だ、というより、口元のしわや哀しげな表情が印象的だからでしょうか。それが魅力の一つなのかもしれません。

全編を通して語られる「復讐」ですが、少し気になる点があります。まず、犯罪行為が堂々と行われすぎ。治安はそんなにゆるいのか?短銃で撃たれた男はどうやって処理されたのか。
次に、子を取り返した後も復讐の炎を燃やし続けていられるものなのか?そもそも、相手は自分が犯罪の片棒を担いでしまった相手。いくら子を奪われ憎いとはいえ、連続殺人鬼への断罪と見れば復讐というより義憤を感じます。また、わざわざ他の家族を呼んで手を下させるのも、どうも自分にとっての贖罪行為(または責任回避?!)に見えてしまう。もちろん、殺される恐怖をたっぷり味あわせる意図なら成功したといえるのでしょうが。
そして、肝心の流血シーンはとても少ない。想像したほどの残酷さではありませんでした。

復讐3部作の締めということで製作へのこだわりが見えるような作品です。映像は文句なく美しい。観てみるだけの価値はありますが、感情移入は子を産む経験のない者にとって少し厳しかったです。近くで見てた女性は後半でボロボログシュグシュに泣いてたな。
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by murkhasya-garva | 2005-12-23 16:13 | 映画
「ワー!マイキー リターンズ!」
b0068787_1824256.jpg“石橋義正監督特集 プラスワン”@京都みなみ会館の2本目。「オー!マイキー」の劇場版の第3弾なんだそうです。昔、マンガ雑誌のアッパーズかどこかで掲載していたような。マネキンを使ってマンガを作る。それだけでも意味不明というか目からウロコだったんですが、それが映画になると。ちょっと好奇心が沸きましたが当時はそのまま観ずじまいでした。


シュールな映画です。アメリカンジョークのパロディを連発します。しょうもないオチをつけて皆全員で高らかに笑う。常にアハハハハ、アハハハハが響くわけです。後半はジャパニーズ色の強い、ラブコメ、ナンセンス系が中心になります。

基本的にマネキンを使ったシュールな作品だからか、ドッカンドッカンの笑いは期待できません。小ネタにプッと吹き出すものなので、笑いどころがつかめない人もいるんじゃないか。
観ていて、微妙だな~とか思ってると、前のほうで1話終わるたびにソワソワしたり、友達に話しかけてる人がいるし。何だこの空気は。

シュールだからか、個人的にあまりしっくりと来ない作品でした。実験映画みたいな作品。これが3部作ってか。色々と挑戦してますよね。
・・・と思ったら2000年に「バミリオン・プレジャー・ナイト」で石橋義正監督が発表したもので人気が高かったものを、こうやって連作しているらしいのです。今回のは未発表作品をまとめたものだとか・・・
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by murkhasya-garva | 2005-12-22 16:42 | 映画

狂わせたいの

「狂わせたいの」
b0068787_18232365.jpg“石橋義正監督特集 プラスワン”@京都みなみ会館の1本目。誰だ石橋義正って。
終バスに乗り遅れたサラリーマンに起こる悪夢のような出来事が、70年代の歌謡曲にのせて次々と描かれる。いわゆる不条理コメディ。
一度でいいから観てみたい、と思っていた作品です。多少のエロは覚悟していましたが、そうでもない。それよりもすごいのがこの作品の不条理ッぷりでしょう。訳の分からない人たちに振り回され、ほうほうのていで逃げ出し、また変な人に捕まってしまう。この理解不能なテンションにはまってしまい、始終笑いっぱなしでした。


サラリーマンの災難は続きます。飲んだくれタクシードライバー、ダンシング女医、ヤク中女子高生、ひき逃げお嬢さん・・・。女性を中心としたキャストですごくヘンな世界が繰り広げられる。役者さんが出演しているらしく、皆アクが強くて、もといアクションが激しくコントばりの勢いがあって楽しい。この作品では監督の石橋義正も出演しています。多分飲み屋の親父でしょうが、この役は壊れすぎだろ!!すごいだみ声で無駄に声がでかい。妻は極度の対人恐怖症。っておいおい。接客業だろ。
主人公の男を演じている岡本孝司のじょじょに壊れていくさまも見ものです。はじめは普通のサラリーマンなのに最後あたりでは頭をしきりに振ったり、「ヒヘヘ」とか気持ち悪い笑いをしたり。

アクションが大きければその分だけ笑いがでそうな、コント系のカルト作品。もちろん観る人は選びますが、ナンセンス、不条理、コントが好きな方には絶対オススメの一品と言えましょう。
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by murkhasya-garva | 2005-12-21 18:29 | 映画

真夜中のピアニスト

「真夜中のピアニスト」
b0068787_20184868.jpgロマン・デュリス主演作品。ピアノ作品はここのところタイトルが似たり寄ったりになっているのが気にかかる。「ピアニスト」「海の上のピアニスト」「戦場のピアニスト」・・・一体どういう意図があるんだろうか。この作品はベルリン映画祭で銀熊賞(最優秀音楽賞)受賞、金熊賞ノミネートという輝かしい成績を引っさげてきた、にもかかわらず単館上映。


トム(ロマン・デュリス)は、父と同じ道を歩むように不動産業の裏ブローカーとして生きている。ある日昔のピアノの恩師に再会し、よみがえる情熱から再びピアノを志す。しかし10年間置き去りにされてきた才能は錆び果て、残ったものはピアノへの甘い憧憬ばかりだった。紹介された教師はフランス語が話せないピアニスト。不動産業から足を洗おうとするもさらに多くの困難が立ちはだかる・・・。

「若い」ことは、何かしら人間に魅力を与える格好のアイテムとなるようです。少年時代はとうに過ぎたと思っていても、昔から成長することなく残っている部分がある。しかし現実はその「若さ」を残した者にも容赦はない。思うように上手くいかず、葛藤し平静さを失うトムを、デュリスはとても繊細に演じているようです。

老いて弱くなった父が、昔の強く独断的な面影を失い、自分を「ダチ扱いしやがる」。そのやるせなさに思わずいら立ち、悲しみ、過去の幻影にしがみつこうとする姿も、ピアノに再び向かい合う機会を得、昔を取り戻すように没頭する姿も、根っこでは同じものを感じさせます。若々しい頃の自分を消化することが出来ず、今になって、無責任にも当時への甘いあこがればかりが彼をひきつけてやまないんでしょう。

しかし、トムのピアノへの打ち込みようは何ともいじましく映る一方で、美しささえ感じます。仕事の直後にもピアノ、女と寝てもピアノ。純粋でひたむきな想いは、時に思うように弾けずいら立ちを爆発させるものの、途切れることがない。ピアノへの姿勢というのは、ある意味別格でストイックです。いままで描かれてきたピアニストの映画(「シャイン」「海の上の~」「戦場の~」など)も、現実世界と葛藤しながらもピアノへの気持ちだけは相も変わらず純粋な人々の姿を映し出しています。

音楽がとても効果的に配置されています。トムが1人のときは必ず音楽を聴く。ブローカーのときはもっぱらエレクトロ。ピアノとトムとを敢えて切り離そうとするアイテムのようです。そして終始練習し続けるバッハのトッカータホ短調。上手くなっていく様子が映し出されるのは感動的でもあります。
かつてピアノを弾いていた人には、この気持ちが強く伝わってくるんじゃなかろうか。青春映画として、見事に揺れる心が描かれています。だてに金熊賞ノミネートされてないと思うんですが。
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by murkhasya-garva | 2005-12-16 20:19 | 映画

ウィークエンド

「ウィークエンド」
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ゴダール作品で観たまんまの感想を書いてみよう第2弾。前回が観やすさで印象的だとするなら、これは表面的な奇矯さがとても印象的な作品です。本編に入る前に「宇宙をさまよっていた映画」「鉄クズから見つかった映画」とテロップがでる。自虐なのか?
作中でタネを明かしているように、この作品は現今の映画事情について描かれたものだと分かります。もっとも後半は歴史批判に移っているようですが。



一つ一つのエピソードが単調に延々と流れます。内容は様々なものがあるため、そのテンポに慣れたら大丈夫だろうけど、何を言っているのか分からないまま観ていたら確実に寝てしまいそうな気がします。出来ればこれは2度3度と回数を重ねて観ないと全体の正確な把握は出来ないんじゃないでしょうか。というのも、台詞の量が圧倒的に多い。しかもその台詞が「思想を語る」ものだから逐一覚えるのは到底無理というものです。とはいえ前半は映画批判のようなので、そこまで観るのは苦しくないかもしれません。

映画について語るくらいだから、それぞれのシーンに意味があるんだろう、そう思って観ると想像も膨らんできます。ベランダから淡々と自動車をめぐるトラブルを映す、薄闇のなかで女が淫猥なエピソードを男に独白する、何キロにもわたる渋滞を最後列からゆっくりと撮っていく、自称神にカージャックされる、童話のキャラクターらしき人物をなぶる、ゴミ収集車の男たちが交互に延々と思想を語る。恐らくそれぞれが今までの映画をさらに戯画化しているのでしょう。つまり、ドキュメンタリーや官能映画、プロパガンダ作品、現代の映画手法の行き詰まり、古典作品との葛藤、そして哲学や思想を主張するための映画の提起へと移っていくわけなのだろう。

車で出かける2人の夫婦はゴダールたちなんだろう。その道行で人々に何かとケチをつけているのがどうやら主張っぽいですね。というか主張にもなっていないのもありますが。おおよそ概観していたり、せめぎ合ったりして、これがゴダールたちの取ってきた姿勢なのか、とか想像します。

後半のシーンは歴史批判のようです。今風の服装をした若者がゲリラ戦線に立ち、敵(?)と戦う。もちろん象徴的で、いくつかの内容が含まれているんでしょう。夫婦も巻き込まれますが、どういう風に彼らは位置づけられるんでしょうか。捕まって仲間になる、ということは賛同者になるということなのか?

まあ同じことを言うようですが、全体的に細かい解釈をしないとゴダール作品は理解できないんじゃないでしょうか。近くで見ていた大学生らしき2人も、「・・・だからゴダール作品のラスト10分を観て全体が理解できる、というのはあり得ないと思うんだけど・・・」というようなことを言っていましたが、確かにそうだと思います。これはまさに、ラスト10分では分かりそうにない作品。
エンターテインメントとしての作品ではないことを断っておきますが、それ以上に「観る」ことに努力を強いる作品だと思います。
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by murkhasya-garva | 2005-12-15 15:36 | 映画

帰郷

遅くなってすいません。ちゃんとupする計画はたびたび頓挫している模様です。。。
「帰郷」
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西島秀俊が2年ぶりの主演で登場。もちろんそれまでに多くの作品に出演しているようです。最近だと「Dolls」「カナリア」「犬猫」「メゾン・ド・ヒミコ」などに。他の出演者は「ニワトリはハダシだ」に出演した守山玲愛が娘(?)役で、また守山玲愛の母で片岡礼子、晴夫(西島秀俊)の母親として吉行和子がそれぞれ出演。





突然、晴夫の元に母(吉行和子)から葉書が届く。母が再婚し地元で結婚式を行うというのだ。帰郷した先では、子を持ち歳を重ねた旧友と出会う。昔から想い続けてきた深雪(片岡礼子)とも偶然に再会する。彼女は晴夫に家に寄るよう言い、翌日姿を消した。1人の娘、チハル(森山玲愛)を残して・・・。


2年ぶりの主演作、と言われてファンは心ときめきそうなものです。確かに西島秀俊はいい役を演じています。晴夫は社会人になって何年も経つのに、地元で子の親となった旧友と比べるとどこか歳をとりきれていないような感じ。結婚していないことで母に負い目を感じて思わず反発したり、いつまでも昔の女性に想いを寄せ続けたり。いつもどこかふて腐れたような表情で、人に自分の感情をそのままぶつけてしまうような幼さを残した彼に、深雪がやきもきするのは無理もありません。
「メゾン・ド・ヒミコ」でちょっと世慣れた男性を演じ、そしてこの作品、というのがとても印象的です。役柄の幅があるなあ、と。

「ニワトリはハダシだ」で天才子役といわれた守山玲愛はここでもいい演技を見せてくれます。さりげない仕草や表情が自然に出ているようで好感が持てます。むしろその仕草が細かくて大人びていてかえって不自然に感じるくらいかと。「ブランコ乗りたいの?」と聞かれ、一間置いてそっと顔を斜めに向けうなずく様子なんて、嘆息してしまいました。このくらいの年齢の子がこんなことやるだろうか。自然な行動や台詞をはっきりと表現しているところが、とても「魅力的」です。
吉行和子はおばあちゃん役のアクがきついですが、雰囲気がにじんでいます。そして、片岡礼子はキレイですね。ぼくもこんな美人に迫られてみたい。晴夫と対照的に大人の振る舞いがいい感じです。

チハルと共に行動していくにつれ、だんだんと自分の本当の娘じゃないかと思うようになる。そのお互いの心が通じ合う過程がほほえましい。なまじ彼が大人びていず、子供と対等な関係で語っているから、チハルと分かり合えるんでしょう。若者から、父親としての自覚を持つようになる様子は見ごたえがあります。

「なんでしちゃったらいなくなるんだろう」この台詞、名言じゃないだろうか。晴夫の人となりがうまく表現されていると思いませんか。どうしても短絡的に考えてしまうところや、思わず感情的になってしまうんだけど、若さが残り、憎みきれないところが出ていると思います。あと、一押しの台詞がもう一つ。「どうしていなくなっちゃうの!!」 これは後々思い返すと笑ってしまう。
今年は「乱歩地獄」の「なんだったっけな~!」とともに、印象に残る台詞になりそうです。

大人になりきれない若者が主人公のこの作品、なんとも言えない終わり方をしてくれますが、青春ものと考えるといい作品に思えてきます。ただ全体的にヤマ場が無さ過ぎて淡々としているばかりに、印象の薄さが気にかかるところではあります。
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by murkhasya-garva | 2005-12-14 23:13 | 映画

勝手にしやがれ

b0068787_18334529.jpg映画の神様、と言われるジャン・リュック・ゴダール。彼の作る映画は難解との声高く、彼の作品をめぐる映画論は数多く存在している、はず(そんなに知らない)。ぼくは今まで何本か観て、寝なかった作品はありませんでした。分かんないんだもん。
まあゴダールの名前しか知らないようなミーハーの感想だと思って読んでください。
それで今回勇気を振り絞って行ったのが京都みなみ会館のゴダール・セミナイト。いったいどこまで意識を保ってられるだろうか。


タイトル「勝手にしやがれ」は、初頭で主人公が口にする「海が嫌いなら、山が嫌いなら、都会が嫌いなら、勝手にしやがれ」という台詞からきているようです。自分の唇を指でなぞる癖のある主人公。彼はいつものように女を引っ掛け、車を盗んで乗り回します。そこで再会するアメリカの女――。

ジャン=ポール・ベルモンド演じるミシェル・ポワカールは美男子というわけでもないのに、やけにスタイリッシュというかカッコつけで、いちいち行動が目を引きます。当時の若者をなぞったのかも。彼の行動の奇矯さは後々までこの作品の注目点になっています。また、彼と共演するジーン・セバーグがとても美人です。顔立ちがオードリー・ヘップバーンによく似ている(それしか知らない)。短髪だからかいっそう魅力的。
必要以上に言葉を介そうとしない会話がとても印象的。
目的地に向かうのか、車で行く途中、「乗せて」「何時?」「11時10分前」「あばよ」・・・驚きましたが、これだけで十分に意味は通じるんですね。昔のカッコいい言い回し、というのに近いのか?

ミシェルのある種の勝手気ままさ、思い付きの行動がカミュの「異邦人」の主人公、ムルソーの不条理さと重なります。そういえば昔から、年長者は、若者が理解できない、近頃の若い者は・・・といって嘆く。つまり若者の不条理さは、1つ、2つ上の世代とは共有しがたい感覚から指摘されることなのかも知れません。でも、そのいわゆる「不条理」はいつしかその社会の本流になっていないでしょうか。そしてまた新たな「不条理」が次世代の若者から発生する。替わりゆく世代。
もっとも、このときゴダールは29才。主人公と殆ど同じ年齢なわけです。老人の視点から描いたとは必ずしも言えませんし、そもそも不条理のつもりで描いたのかどうかすら。それに、主人公はムルソーよりもこだわりを持って、いわば哲学的に考え行動しているところがあります。もっと言えば彼の美学なんでしょうか。パトリシア(ジーン・セバーグ)が現れてからは愛が基調になるように。

でもそんな直感を裏付けるような点があります。ゴダールの作品によくあるのですが、心情や状況の変化で音楽をいきなり挿入します。いやな予感、だったら不安を掻き立てる音楽を、というふうに。この作品では、シリアスモードに入るとよくコミカルな音楽が流れます。まるで彼らの行動を一歩引いて見ることで喜劇のように扱っているようです。
ラストの撃たれてよろけるシーンなんて最たるもの。あれじゃコントだよ。どう見てもラブストーリーとはいえないよな。

ゴダールは当時の若者像を自ら描き出そうとしたんでしょうか。いわゆる青春映画というジャンルに入りそうです。彼の作品の中では比較的見やすい作品だったように思います。
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by murkhasya-garva | 2005-12-10 18:38 | 映画

空中庭園

「空中庭園」
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角田光代原作、小泉今日子主演の小説を映画化。小説、マンガの映画化は本当に多いですね。さて今回は空中庭園をめぐる事件があったそうで…監督が逮捕されたそうです。





ともかく、この作品自体は事件のどうこうに関わらず、回収したりなんかしなくて正解でした。空虚な家族関係、それを「何の隠し事もしない」ことを信条に形作ってきた家族からあぶりだそうという試みのようです。
出演は小泉今日子、板尾創路、鈴木杏、、大楠道代、ソニンなど。

「我々は、何ごともつつみかくさず・・・」
家族の間では隠し事は一切しないことが家族の決まり。のっけから自分が命を授かることになった場所「出生決定現場」を聞くところから始まります。引くわ。小泉今日子演じる京橋絵里子は何のためらいもなくにこやかに答えるんですが・・・。

はじめからそんな光景、ある種とても危ういバランスの上に立っているように見えます。彼女はどんなときでも「完璧な笑顔」。標準語を使う板尾創路。遠くをうつろに眺める家族。そして、ゆっくりと振り子時計のように揺れて彼らのうつろな顔が映し出される。オープニングからこの家族の不安定さを感じさせるわけです。

まず何といっても絵里子の満面の作り笑顔が危うい。不気味です。彼女が家族を完璧にしようとすればするほど、その不自然で無理な試みは彼女自身と共に内部から崩壊している感じです。「あなたたちを1人で家に帰らせたくないの」。絵里子のいっていることは当然なんだろうだけど、その言葉をぬけぬけと言うことの何と空々しいことか。

絵里子の母、さっちゃん(大楠道代)や家庭教師のミーナ先生(ソニン)が外側からその不自然さを突き崩そうとしますが、なかなか簡単には壊れない。特にさっちゃんが元気すぎ。娘とは正反対の明るさで立ち回ります。ガンだというのにあの元気さはないだろう。あんなばあちゃんがいたら楽しいだろうに。ミーナ先生も、この家族が不自然だとうすうす感づきながらキツネっぷりを見せています。彼女の役柄が少し薄いのでどうこう言うのはあれですが、ゲロ吐く瞬間は、うまい!と思いました。

そういえば大楠道代は「赤目四十八瀧心中未遂」のセイ子姉さん役を演じきっていました。どちらも舌鋒厳しい女性の役ですが、カッコいい。何を企んでいるのかそっけない表情で、この現実世界を自分なりに見切って立ち振る舞っている様子が、とてもかっこよくて印象的です。

秘密を作らない、ということ自体が無理なんです。父親の「セフレさん」に言わせれば「人間を人間たらしめているのは恥」です。隠さない、隠せないということがどれほど危ういことなのか。周りの人間のセリフは彼らのボロを次々と浮き彫りにしていきます。そもそも普通の人間が秘密を作らないのは不可能です。その上で秘密を作らない、と宣言しているのは、既に大きな嘘、秘密を公然とついているようなものです。その大きな嘘を一手に引き受け、思い込もうとしている彼女がまともな神経でいられるはずもない。この作品では、最後に彼女はその重責から逃れることが出来ますが、それまでの彼女の壊れっぷりは必見です(個人的には壊れたところで終わっても良かったと思うのですが)。あの人がこんな汚れ(?)役まで演じるとは・・・。鬼気迫るものがあって鳥肌が立ってきます。
少し老いを感じさせるようになった小泉今日子。新たに演技の幅を広げたということでしょうか。

よく出来た作品です。こういう映画こそたくさんの人間が見るべきなんじゃないのか。小泉今日子はこの作品で第18回日刊スポーツ映画大賞の主演女優賞を受賞。ファンでなくても観るべき。
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by murkhasya-garva | 2005-12-09 18:08 | 映画

ミリオンズ

「ミリオンズ」
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ダニー・ボイル監督作品。「トレインスポッティング」「28日後・・・」を手がけた監督が今度は「子供に胸を張って見せられる映画を作りたかった」と、心温まる、夢のような映画を作り上げた。




ダミアンとアンソニーは母を亡くし、父と共に引っ越してきた。兄のアンソニーは頭がよく切れ者で弟の面倒をよく見、弟のダミアンは心優しく、聖者を好み、彼らの幻影を時折見ることがある。はじめ学校になかなか馴染めないでいた彼らのもとに、突然何百万ポンドもの大金が降ってきた。さてこの大金をどうする?

ボイル監督の「子供に胸を張って見せられる映画」という言葉は過言ではないな、と思いました。子供たちがよく抱く夢――大金を持つこと。喜んで施しを与える弟、欲得ずくで動こうとする兄という図式は考えれば聖書のカインとアベル(だったっけ?)を象徴しているんだろう。だからといって説教くさくなるわけでもなく、話がシリアスになりすぎることもない。あくまで現代の子供たちの夢、という視点を大切に作られたように思います。

そりゃダミアンの妄想癖や超切れ者のアンソニーなんているわけないし、リアルじゃないんですが、登場人物がいそうかどうかということに現実味を求めているわけじゃないのはもちろん分かるでしょう。もし、ああだったらこうする、という空想を突き詰めた結果、出来たのがこの「ミリオンズ」という寓話だったと考えるのが妥当じゃないでしょうか。
そのための人物設定も準備周到。ダミアンは見るからに純真な少年。貧しい人に喜んでお金を与え、聖者とよく話をする。
「あ、聖ヨセフだ、BC・年生まれ、没年不詳!」そんなわざわざ言わんでもいいがな。

お金をめぐって変化する家族。父親に知られることで話はよりややこしくなります。子供の夢は一気に現実に引きずり下ろされ、子供と大人の対立図式が現れます。それまでダミアンとアンソニーという、言ってしまえば信仰と知能の対立だけでしたが、絶対的な差のある力を振りかざし、愚かで(浅はかで)ある意味最も現実的な方法を取る大人との、夢と現実の対立が出てくるわけです。しかも裏大人バージョンの泥棒もでてきて、今度は表vs裏?! でも彼にお金を返すのが話が早いと思うんですが。ある意味持ち主だし。

最後にダミアンが取る選択は、なるほど!という感じです。最も円満に解決できる方法じゃないか。その正しい選択をした彼には、神様からのごほうびが・・・。
ここまできて、本当に泣きそうになってました。何が泣きのツボに入ったのか分からないんだけど、この純真な少年が得たものを考えると、感動して感動してしょうがないんですね。帰る途中も思い出しながら泣きそうでした。今考えただけでも胸が一杯になります。おいおい…。

童話、寓話といった類のストーリーになるので人によっては味気ないものに感じるかもしれません。それに、この作品自体キリスト教圏の家族向け作品と考えたほうがいいようで。そういうのでも構わなければぜひ観にいってください。感動して胸が詰まりそうになるかもしれません。そうそうないだろうけど。
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by murkhasya-garva | 2005-12-08 16:54 | 映画

運命じゃない人

さてさて人の記憶なんて生モノなわけでして。
早く感想を書いてしまわないと、内容を覚えてるぞ、なんて自認してもそのとき味わった感動なんてどこへやら。いつの間にか、こんな内容だったっけ…なんて目も当てられないことになるのです。名作になるとその後悔度は著しく上がる傾向にあるようです。。。

「運命じゃない人」
b0068787_17162713.jpg主人公の宮田武はその晩小さな幸せを手に入れる。一方、彼に関係する人々は2000万円もの大金をめぐる事件に巻き込まれていた・・・
この作品、タイムスパイラル・ムービーというジャンルなのだそうです。それぞれの登場人物の視点で何層もストーリーを重ね合わせることで、その夜の出来事が明らかになっていくのです。こんな感じの構成の映画は、たとえば「ユージュアル・サスペクツ」「メメント」「サマータイムマシン・ブルース」がありました。時間軸をさかのぼって真実がみえる、という類の作品です。
これらの中で本作品は一番丁寧でわかりやすく、なおかつ面白さがしっかり保たれているようです。


興味深いことに、見ている人たちの笑うポイントがほぼ同じなんです。ちょっとした仕草、台詞にクスッと笑ってしまうんですが、周りも同じところで笑ってる。
たとえば、神田の「お前、電話番号なめんなよ」という台詞。話し方もさながら、そのタイミングが絶妙なんです。神田役の山中聡の表情もまたいい。かっこいいのにどこか抜けていて、さえないキャラがすごくぴったり。少し眉を下げて「お前電話番号…」なんて言われたら、笑うしかないでしょう。
ほかにも、真紀が宮田のフォローでさらに泣いてしまうところ。涙をこらえきれず、「ぶふっ」といってしまうのは個人的に好きです。
また、神田の「早く地球に住みなさーい」で爆笑。最後に置かれるからこそ生きる台詞だと思います。

多分キャラの人物造形がしっかりできているんだと思います。だから微妙な仕草さえも納得できるし、安心して笑えるんだろう。
細かいポイントで数多くの笑いどころが用意されている。そのたびに思わず笑ってしまうのです。しかも周りの人もそろってよく笑う。楽に笑える、そんな雰囲気が自然にできていました。

先にも言いましたが、ストーリーの構成はそこまで目新しいものではありません。しかし、この作品の魅力は言うまでもなく、構成なんです。一人一人の視点に立って真実が確実に明らかになっていく。またその中で張られた伏線から、ほかの人物の秘密がまた明らかになる。
丁寧に解き明かされていく様は、見ていて爽快ですらあります。
ラストシーンも必見です。ああ、ここでも!という最後の落ちが感動モノです。

一つ一つの台詞までもが計算されているこの作品、相当丁寧に作りこまれていると見た。みて満足する1本だと思います。もっと大手で上映されてもいいのに。

余談ですが、チラシの挿絵は窪之内英策によるもの(中村靖日がおめでたい人みたいに、ものすごいアホ面で描かれています)。「ツルモク独身寮」が有名かな。彼のマンガもこんな感じで、「思わぬ波乱、小さな幸せ。」といった雰囲気が印象的です。彼が挿絵に協力したのも納得できる。内田けんじ監督はたぶん彼の作品が大好きなんだろう。。。
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by murkhasya-garva | 2005-12-02 17:20