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by murkhasya-garva
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16[jyu-roku]

「16[jyu-roku]」(2007)
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大阪のプラネットプラスワンでは、7/21~8/3の期間で“(奥原浩志)×(タナダユキ)FILMS OF NEW JAPANESE YOUTH”と題して、二監督の作品が上映されました。奥原監督作品は「16[jyu-roku]」「青い車」、タナダユキ監督作品は「月とチェリー」の計3本。


タナダユキといえば、先日公開された「さくらん」の脚本を手がけ、また「赤い文化住宅の初子」では監督を務めたことで注目されています。奥原浩志氏の名は実は知らなかったんだけど、「青い車」は「ピンポン」のARATAが出演するので観たかった作品でした。こうやって、観たかった作品を思わぬ機会にスクリーンで観れるってのは本当に嬉しいことですね。
奥原氏もタナダ氏、どちらも若者の心情を細やかに汲み取った作品を作る監督さんで、ぼくとしては今回観た3作品全部、ツボに入りました。
鑑賞日は7月2日。上映された作品は、「16[jyu-roku]」「青い車」「月とチェリー」の順。

「16[jyu-roku]」、今回の特集で上映された本作は、「赤い文化住宅の初子」の続編としての位置づけ。初子役を務めた東亜優が主役のサキを演じています。さてこの作品の監督は、タナダユキではなく奥原浩志。続編なのに違う監督だと世界観がチグハグにならないか、という疑問が観る前に頭の中をさまよっていましたが、そんなモヤモヤは見たら一気に解決。本作は続編でありながら、続編ではないのです。

「16[jyu-roku]」のサキは中学を卒業して上京します。サキは女優になるため東京に一人向かい、新たな生活を始めます。東亜優演じる15歳の少女が16歳になり、新しい環境で成長していく姿はまさに、「赤い文化住宅の初子」の続編。また、サキは映画初主演を果たすのですが、その作品名は(タナダユキ演じる)タナベ監督の「初子の恋」。タナダユキ監督の「赤い文化住宅の初子」の変名ですね。
つまりサキは、初子のその後の姿であると同時に、初子を演じる一人の新人女優でもあるのです。言ってみれば、フィクション(初子)にかんするフィクション(16)という、メタフィクショナルな側面をもつ続編です。そしてまた東亜優のデビュー当時になぞらえられているという意味では、自伝的な要素も強いのでしょうか。まあそんなカテゴライズはともかく。

15歳の初子から16歳のサキへ。少女は新しい環境のなかで少しずつ経験を積み重ねていきます。そこには彼女の日々移りゆく感情が描かれます。あるときは期待を胸に抱き、あるときは孤独や不安に揺れ、またあるときは自分の気持ちが恋心なのかを図りかねます。この、まだ大人になりきれない少女の姿は、奥原監督の、対象を静かに優しく見つめる視点が豊かに描き出してくれます。カメラの視点の切り替えを抑え、BGMをほとんど使わず周囲のノイズもある程度許して映し出された、何気ない、しかし変化し続ける日常の風景。その中でのサキの、たどたどしくも手探りで何かを感じ取っていく姿が、とても新鮮に映ります。

「青い車」やこの作品では、若者特有のいまだ定まらないモヤモヤとした気持ちが中心になっていました。奥原監督はこういった感覚のとらえ方がとてもうまいのです。サキたちの一瞬見せる笑顔やふと翳る表情からは、彼らの未分化の情緒、“モヤモヤ感”が雄弁に語られます。
奥村監督のカメラはまるでドキュメンタリーのように、さりげない位置に置かれます。例えば、リハーサルやオーディションに使われるカメラのようだったり、部屋の一隅に無造作に置かれた記録用のカメラのようだったりする。その前で、わざわざカメラのために特にパフォーマンスを用意することなく、平然と振舞っているサキたちが居るその風景は一見地味なんだけど、私たち観客は彼らが“確かに在る”、現実に存在するという思いを抱かずにはいられません。そうやって映される彼女たちの姿―特に沈黙の場面―は、その風景自体が言葉としての表現に収まりきれない余韻のようにも見えます。

静かで、これといった事件もなく淡々と描かれる主人公の日常。ぱっと見、地味にも思えるかもしれませんが、この作品の叙情性は抜きん出たものがあるのです。それはいわゆる青春ものにありがちな、詩的で病的に繊細な世界のものではありません。派手でないことを恐れず、等身大の少女が生きるありふれた世界をまっすぐ正面から派手な誇張もなくただ優しく見守ったからこそ生まれた、本作の「きわめて忠実で丁寧な」叙情性。それは昨今のフィクションにあふれる派手さの中で、逆にその瑞々しさを際立たせています。
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by murkhasya-garva | 2007-08-04 02:25 | 映画