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by murkhasya-garva
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武士の一分

「武士の一分」(2006)
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一週間映画を観ず、図書館にこもりっきり・・・集中が切れる、勉強が身につかない、気が滅入る、これって禁断症状でしょうか。その一週間後の日曜、高校の後輩が撮った自主制作映画を観る前に見てきた一本。




下級武士の三村新之丞(木村拓哉)は、妻の加世(檀れい)と穏やかな生活を送っていた。しかし、藩主の毒見役を務め失明。妻が家禄を守ることと引き換えに、番頭の島田藤弥(坂東三津五郎)に弄ばれたことを知った彼は、目が見えぬ体で島田に果し合いを挑む。

『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』に続く、山田洋次監督三部作の最終章。しかも木村拓哉が主演というのもあり、注目していた一本です。木村拓哉というと、演技云々以前に“木村拓哉”という存在感で役を演じているような俳優。良くも悪くもアイドルだというイメージがついていました。

撮影される前から、何かと騒がれていた作品でした。何といっても山田洋次×木村拓哉、それだけで幅広い年齢層をガッチリつかまえます。『隠し剣~』で期待を裏切られたファンは、「もう原作ものは…」と言いそうな空気も。おまけに事務所側からは「ロケはスケジュールが厳しいからセットにしろ」という要望があったとかで、当初から製作側でも少しもめていたようです。

期待と不安を受けて公開したこの作品、今回は原作を読んでいなかったのもあってか、とてもいい印象を受けました。前作のようにストーリーを追いにくい展開でもなく、むしろ丁寧に各エピソードを描くことで、本作の世界観―静かで、しかし確かに緊張感をもった―つまり武家社会の空気や、各キャラの人となりがよく描写されています。

また最近映画を観ていないことや、学生の自主上映を前夜に見に行ったこともあり、ほぼ完璧に近いストーリーや情景の美しさが、目に心に沁みるのです。主人公夫婦の温かな愛情は、直接の表現がなくとも確かに伝わってくる。ああ、山田監督はプロだなあ…と思わずため息が漏れます。というかすでに感涙ものです。

俳優の個性も適度に抑えられ、この世界観を形作る不可欠な要素になっています。ぱっと見て「○○だ!」と分かるような俳優の演出を出さず、ストイックに俳優の方々が各自の「役」を演じているのです。たとえば居並ぶ毒見役の中に木村拓哉ふんする三村が違和感なくとけこんでいる。そんなごく当然の光景がごく普通に映される、すばらしいことだと思いませんか。

剣術の演技もまたいい。盲目の剣士という特殊な状況でごまかされているようにも感じず、緊迫感のある剣戟が見られるのもこの作品の良いところです。道場で、緒方拳と木村拓哉の鬼気迫る稽古はぞくぞくさせてくれます(細かい突っ込みはこの際なしで)。

すべての要素が映画という作品のためにある―そんな見落とされがちな、でもとても大事なことがこの作品ではしっかりと生かされています。山田監督を筆頭とした各人のプロ意識が、武家社会という緊迫した空間に満ちている、とても充実した作品だと思います。
12月上旬現在ではまだ公開しているから早く見に行くべし。
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by murkhasya-garva | 2006-12-12 11:13 | 映画