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by murkhasya-garva
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草迷宮

「草迷宮」(1979)
草迷宮_b0068787_335952.jpg
泉鏡花の幻想的な短編作品をもとに、亡き母が歌っていた手毬唄を巡るひとりの男の旅を紡ぎだす。フランスのオムニバス映画『プライベート・コレクション』の1本として製作された。




詩人、文筆家、映画監督と多彩な才能を持つ寺山修司が手がけた作品。「書を捨てよ街へ出よう」とは趣きが異なり、現実と幻想が互いに入り乱れる。各エピソードの関連を正確に説明するのは。たぶん難しいだろう。今回ばかりは、amazon.comで的田也寸志氏の得意文句 (?) 、“映像のイマジネーションに身をゆだねるのが得策”に賛成。

以前に観た「書を捨てよ街へ出よう」は一種の青春もので、本作とは趣向が違う。しかし、なぜか寺山作品はどこかしら“似ている”のだ。恐らくそれは、あまり例を見ない挑戦的なテーマ、感覚に訴えるような刺激的で言語化しにくい映像、奇抜な演出などの点で共通するのかも知れない。

本作は母と息子の歪んだ濃密な関係を描いた作品である。たった40分とはいえ、そのボリュームにはほとほと参ってしまう。狂気の娘の媚態、踊り叫ぶ白塗りの小坊主たち、妖怪を振り払おうと刀を振り回す主人公とまあ、観ているこっちまでおかしくなりそうだ。

母の教えた手まり歌の続きを求め、旅を続ける青年。彼の行く先々で幻想が何度もフラッシュバックする。例えば狂気の娘から逃れ、裸で逃げ出した主人公は、砂丘に伸びる長い長い赤い帯の上を走っていく・・・これといった区切れもなく夢と現実が繰り返されるものだから、いつの間にかどちらがどちらなのか分からなくなってくる。

だが全てのエピソードは、母親と息子の愛情という方向性で共通する。母は子を束縛し、子は母の姿を永遠に求める。手まりは母親の思い出を呼び起こし、それは連想的に(「孕み石」という)丸い石とつながり、“胎内回帰”のイメージを生み出す。際どいテーマに加えて、怪しげで毒々しい色彩が感覚を刺激しつづける。

三上博史が15歳で出演した作品でもある。まだ若いのに役が上手い。おまけに色っぽいときたもんだ。寺山修司作品の意欲的で挑戦的な空気によくなじんでいるように見えた。
by murkhasya-garva | 2006-12-04 03:05 | 映画