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by murkhasya-garva
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パビリオン山椒魚

「パビリオン山椒魚」(2006)
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11月24日で上映終了する注目のマイナー作品が多い。第七藝術劇場で「ブレス・レス」も!思わず阪急電車に飛び乗ろうとした自分がいました。幸い(?)乗り遅れたので、予定通り京都みなみ会館で鑑賞。予想にたがわぬ奇作でした。観てよかった。



動物国宝のオオサンショウウオ・キンジローの誕生パーティを控えた二宮家。そんな折り、父親からキンジローの危機を知らされたあづき(香椎由宇)は、レントゲン技師の芳一(オダギリジョー)と共に波乱万丈の冒険を繰り広げていく。

噂どおりの怪作。あまりの破天荒なストーリーに「なんてバカな映画」と呟き、混乱しながら映画館を後にした方は多かったでしょう。しかし一方で映画関係者には、驚きと尊敬の念を持って迎えられているのも注目です。ここで確かなのは、監督は絶対わざとやってるし、必ずしもデタラメに作っているわけではない、ということ。

サラマンドル財団と第二農響の対立、第二農響からレントゲン技師の芳一に依頼されたキンジローの誘拐、あづきは不審を察した父にキンジローを保護するよう頼まれる…それなりに前半のストーリーは整っているのです。しかし芳一をはじめ暴走を始める人々のおかげで、後半はギャグとも思えるとんでもない展開に。
ここあたりで付いていけなくなったのか、居心地が悪そうな人たちが続出。

まるであらゆる関節が別のところに付いている、人間のカタチをした宇宙人のような作品。見せ場を軽くスルーし、どうでも良さそうな場面を丁寧に撮る。ベタベタなヤマ場を思わぬところに挿入し、「さあ泣け」と言わんばかりに見せ付ける。まっとうな映画ファンに評価される気なんてなさそう。その徹底振りには、呆れを通り越して尊敬すらします。

既存のストーリーのパターンを外していく―最近では黒沢清監督の「LOFT」(2005)にそれが見られます。こちらは展開に従って、現実と虚構という区別そのものを失わせようとしたようですが、本作は真実と嘘、現実と虚構、そんなテーマすらも“一貫させまい”とする徹底した力の入りよう。冨永監督がうそぶくように、本作は多くの作品の要素をいたるところに散りばめ、混乱はその度合いを高めていきます。

しかも一見デタラメな内容のなかで、複数のテーマを同時に含むという荒技にも取り組んでもいる。もちろん、各テーマの決着の付け方にもわざとらしいくらいムラがあるんだけど。
どれ一つとして同じものがない。あえて言えば、「本物とか偽者とか、どっちでもいいの」というあづきの言葉にみるように、本作全体の「一貫性のなさ」という点で一貫しているようです。

オオサンショウウオのキンジローをめぐる顛末、そこにはあらゆる人間の姿が現れています。恐るべき才能の冨永昌敬監督、彼の世界観を見事に音楽で彩った菊池成孔、そして壊れっぷりもサマになっているオダギリジョーにより、新たな映画の時代が切り開かれました。
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by murkhasya-garva | 2006-11-25 09:18 | 映画