休止中。


by murkhasya-garva
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手紙

「手紙」(2006)
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シネコンで21時以降に上映してる作品ないか…と捜していたら、ありました21時45分。お客もカップル数組、合わせて20人弱。悠々と座っていたら、席をゴツゴツ蹴る奴らが。しまいには「好き☆」「好き☆」……ッカ~ッ!! うるさいよ後ろ(泣)!!!



プロのお笑い芸人になる夢を持つ青年、直貴(山田孝之)。しかし彼は、夢や仕事、恋愛といったもの全てを諦めていた。それは兄の剛志(玉山鉄二)が、彼を大学に行かせるために強盗に入った家で殺人を犯し、刑務所に服役していたからだ…

いわゆる「泣かせ」の邦画は、最近は外れる傾向にあるようです。大体前評判だけで行く気が失せるのですが、今回は異例の高い評価。実際に刑務所でも上映されたとか。ボロ泣きとまではいきませんでしたが、ストーリーや登場人物の心理描写が丁寧に描きこまれ、俳優さんたちの時折ゾクッとするような表情がたまらなく印象的でした。

小説の映画化も、マンガと同様に難しいものなのでしょう。原作の色彩を損なわず2時間という枠に集約させる作業に、今まで沢山の映画が失敗してきました。必要な部分を活かしそれ以外を切り捨てる…そこに現れるワンシーンごとの飛ばしは、作品の明暗を分けます。本作は主人公の心の揺れに寄り添うように描かれ、ストーリーが違和感なく繋がっています。

強盗殺人犯の肉親であること。誰でもなりえることだけれど、当事者でない限り、私たちは永遠に大多数の排除する側なのです。その大きく深い溝は簡単に飛び越えられるものではありません。確かに、彼らの短絡的な行動に対して「自分だったらこうする」という反論はできるでしょう。しかし基本的な想像が欠落した者にとって、その言葉は自己満足でしかなく、どこまでも無効なのです。

大多数の観客との決定的なズレを抱えた主人公たちは、一方でごくごく普通の生活を送ります。同じように夢を抱き、恋愛をし、幸福な将来を目指して。しかし同時に周囲の反応も、きわめて現実的です。いつの間にか離れていく人々。この徹底したリアルな描写が観る側との溝を埋めていき、私たちに「どうすればいいのか」を考えさせる手がかりを与えてくれるように思います。

彼らを追うカメラもいいタイミングで主人公をアップで映し、感情移入させるのに役立っています。主として感情の盛り上がりを重視するのは、テレビドラマでよくある方法…ですよね。ラストの慰問のシーンは特に素晴らしい。必死に合掌する玉山鉄二。あの凄まじいインパクトに思わず身を乗り出してしまいました。それまでの緩やかな映像に比べ、強烈なものがあります。

差別される側、そして排除する側もどうあるべきか。現在の日本人の感覚に忠実に沿って描かれているからこそ、本作のテーマはいっそう説得力を帯びて伝わってきます。
しかしこの作品は同時に、「ごく普通の感覚」を描いているがため、観る者の現実性や感性の強度を問うものとなっています。正直言って一般的な感覚がないとツライ・・・。
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by murkhasya-garva | 2006-11-19 18:11 | 映画