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by murkhasya-garva
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<UKオールスターズ!キンキー・ナイト>堕天使のパスポート

「堕天使のパスポート」(2002)
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10月28日に催された<UKオールスターズ!キンキー・ナイト>で2本目の作品。タイトルも画像もそそられないなあ、と気にも留めていませんでしたが、なかなかどうして。深刻なテーマに堅実なストーリー展開が上手い具合にマッチしております。



ロンドンのホテルに勤務するトルコ移民のシェナイ(オドレイ・トトゥ)。彼女はNYへ脱出し、自由に生きることを夢見ていた。そんなある日、彼女の同居人であるオクウェ(キウェテル・イジョフォー)が、ホテルで違法な取引が行われていることを発見する…

こういう作品って好きです。何も起こっていなさそうで、水面下では相当深刻なテーマが色濃く根付いているような内容。イギリス映画に珍しく、定番のハッピーエンドをしっかり目指していたりします。この淡々としたテンションは観る者を選びますが、なかなかに見ごたえのある作品です。

さて本作は、移民の国としてのイギリスを描いた作品。不法就労をする難民たちの姿が、臓器密売という重いテーマを主題に描かれます。臓器密売のテーマを掲げた作品は初めて見たんですが、人体の一部、というとどうしてもホラーを思い出します。生々しくて、猟奇的で。人間の悪意を露骨に描く「エグさ」を連想するんです。

しかし、本作はあくまで社会派映画。トイレに誰かの心臓が詰まっている、難民の男のわき腹が無残にえぐられている、といったサスペンスやホラー行きのフラグを華麗にスルー。ストーリーの歯車に上品に組み込んでいきます。というか全編を通して何かしら起こりそうなのに、ある意味「何も起こらない」という奇跡的展開。アメリカ作品では考えられんことです。

もっとも、難民の人々の生活をリアルに描こうとしたら、そんな展開もないのでしょう。日々の生活を必死に送っているとはいえ、彼らは「何もしなければ」安全なのです。生死の境目を日々歩いている、そんな彼らにしょっちゅう何かあったんじゃたまったものではありません。そのため、本作は穏やかではあるものの、「安心感」が決定的に欠如している、という異様な空気が漂っているのです。

本作にはドキュメンタリーのテンションにも似たものがあります。どこまで暗くなろうとも、一貫して感じられる潔癖さ、純粋さ。フィクションならではのヌルさもありますが、そういうものを含めて、製作者側の問題への強い意識がうかがわれます。ノンフィクションから生まれた虚構――本作のメッセージは、安穏な生活を送っている私たちではなく、むしろ難民の人々へ向けられているのかもしれません。

ハリウッド映画を見慣れていると、肩透かしばかりで面食らいそうな作品です。
死亡フラグが何本も立つラストにも注目!
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by murkhasya-garva | 2006-11-09 09:26 | 映画