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by murkhasya-garva
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<第五回京都映画祭>古都

「古都」(1963)
<第五回京都映画祭>古都_b0068787_1011381.jpg10月26日、祇園会館にて鑑賞。いいところでいつも観客が喋りだす。イライラ…すると前方から「ちょっと静かにしてくれませんか」、後方では「うるせえ!」内心喝采もの。けど、なんとすさんだ空間になったことか。いやはや。皆さんマナーくらい守りましょうね。


呉服問屋の一人娘、千重子(岩下志麻)は父母の寵愛を受けて何一つ不自由なく育てられたが、捨て子であった。ある日、清滝川沿いの北山杉の村を訪れた千重子は、自分と瓜二つの娘、苗子(岩下・一人二役)を見かける。やがて祇園祭、二人は偶然に再会する。お互いに生き別れの双子だと直感するのだが…。

何よりも、若き日の岩下志麻の姿が素晴らしく美しい。今でこそ「極道の妻たち」で有名ですが、40年前から柔和な顔立ちは変わらず、それに加えて清楚さが際立っています。そんな彼女が二人も出るというんです。お互いに姉妹という以上の親近感を抱き、近づきあうシーンのなんと色っぽいことか。ただ抱き合ったり、同衾しているだけなのに、まるで相手に融けこもうとしているかのように思えます。

また双子という設定ではありますが、二人の関係はドッペルゲンガーの関係にとても似通っています。実際に苗子は自分自身を「身代わり」だと言い張るし、千重子とは距離をとろうとするのです。舞台は京都、それに二人の実の親がすでに死んでいることからも、神秘的な印象がいっそう強まります。「自分が二人いる」、それは別の生を追体験する感覚、自身の光と影が入れ替わるような感覚。

本作の内容を象徴するかのように、武満徹の手がけた音楽が観客を刺激します。オープニングで不思議なリズムと共に、伝統的な建物や京都の町並みを次々と切り取るのが斬新です。また作中で紹介されるパウル・クレー。心の「調和」や、本作の「ダブル」というテーマにも関わってきます。
神秘的な空間・京都だからこそ生まれた作品。日本らしいラストがとても印象的です。
by murkhasya-garva | 2006-10-28 09:12 | 映画