休止中。


by murkhasya-garva
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

ブロークン・フラワーズ

「ブロークン・フラワーズ」(2005)
b0068787_11235518.jpg「イン・ザ・プール」に続き、何度も観たい作品のうちの一つ。ジム・ジャームッシュの作風も好きだし、ビル・マーレイの力の抜けた中年男の姿も大好き。本当に面白い作品は、結末が分かっていても何度も見たくなるものだと言うことに最近気付きました。2005年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。


中年、独身、盛りを過ぎた女ったらしのドンのもとに、差出人不明のピンクの手紙が届けられた。そこには「あなたの息子がもうすぐ19歳になる」と書かれていた。お節介な隣人のウィンストンにけしかけられ、ドンはアメリカ全土に散った20年前の恋人を探しに行くが・・・

この作品、5月下旬に1回観たのですが、いつの間にか書きそびれて半年近く。良い作品に限って書きづらいんですよね。どこからこの作品の愛を伝えればいいのか(うわー…)、本当に迷います。その位思い入れがある。

くたびれた中年男が、まだ見ぬ息子とその母を探す旅へと向かった…これって、自分のルーツ探しの逆バージョンなんですね。
恋人との結婚にも踏み切れず、自分の足元の覚束なさを抱えて、ドンは「老いたドンファンとは暮らしたくないの」―いつまで恋人扱いする気か―と責められます。老いたことを知ってなお、昔にすがり付く彼の‘現実感のなさ’‘自信のなさ’は、逆に言えば彼が多くの女性と‘うまくいかなかった’ことの原因でもあるように思います。

そんな彼が一通の手紙によって急に未来を開かれます。過去の恋人探し―口ではイヤだと言いながら、実はまんざらでもない。しかし、再会する女性たちは皆、「何の用?」と突然現れた彼をいぶかしみます。気まずい。結局何の手がかりもなく彼は戻ってくるのですが…。人生の大事な局面を回避してきた男に、最後まで答えが返ってくることはありません。可能性だけはいやと言うほど与えられるのに。

ジャームッシュの作品では共通することですが、本作の魅力を引き立てる要素には「間」が存在します。固定されたカメラで、登場人物の表情の変化をじっくりと撮るんですね。その「間」からは、おかしみと共に各キャラへの愛おしささえ感じます。日本映画にも似たそのカメラワークは、他の洋画には見ない安心感があります。

また、彼の作品の魅力の一つである音楽も忘れてはいけません。絶えずどこかでBGMが流れている。カーステレオから、部屋のコンポから、カフェからと、耳をくすぐる音楽の心地よさがそこにあります。そしてこの音楽は同時に、ドンの心情描写も兼ねています。気落ちした時はフォーレのレクイエム、期待が胸をよぎる時は、まったりとしたエチオピア音楽…本当にセンスがいい。耳に残ります。

ジャームッシュの作品を観ていると、映画をもっと好きになっていく気がします。数多くの作品への尊敬と、オマージュ。その画面からは余裕を感じると同時に、過ぎていった作品の香りを感じさせます。「ジャン・ユスターシュに捧げる」作品。彼の視点は、ぼくをさらに映画へと駆り立てていく。
[PR]
by murkhasya-garva | 2006-10-06 11:25