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by murkhasya-garva
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ディセント

「ディセント」(2005)
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みなみ会館にて行われたホラーのオールナイト、4本目。やっぱりオールナイトはホラーに限る。最後までテンション上がりっぱなしです。本作は、上映当時にイギリスで一大センセーションを起こした新感覚ホラー。まさに人間の極限状態を描いた、恐怖の体験。



自動車事故で夫と娘を亡くし、一年経ってもそのトラウマを拭い去れないサラ。友人たちは彼女を心配し、彼女を洞窟探検へと誘うのだった。6人の女たちが潜り込んだ洞窟、そこには彼女たちの想像を絶する「何か」が待ち受けていた…

「途中怖くて映画館を出たくなった。それほど怖い」とTotalfilms誌は評します。確かに怖い。人の持つ不安を、底の方からえぐってくるような感覚。閉所恐怖、パラノイア、未知の生物…ぼく自身、怖すぎてテンションが上がり、何度叫ぼうと思ったか。…え、怖くなかったって?ホラー映画はガマン大会ではありません。強がるのは金の無駄です。実際に怖くなかった?それはご愁傷様としか言いようがありません。
ホラー映画の観客は、できる限り怖がるのが仕事です(…スルーしてやって下さい)。

序盤は確かに、「未知の洞窟に立ち向かう勇敢な女性たち」という、まるで「狩人と犬、最後の旅」(2004)にも通じるような大自然ものとも言えるでしょう。互いに非難し合いながらも、協力して困難を乗り越えて行く姿は、感動的でもあります。しかし中盤以降、モンスターが現れてからがさらに怖い。殺るか殺られるか、といったパニックシーンでは、モンスターの恐怖と同時に、人間の残虐さが描写されます。

これは「マタンゴ」の恐怖の理由にもつながるのですが、ホラーがホラーである要素は、「モンスターvs.人間」という以上に、「人間vs.人間」という同族争いに言及されるようです。お互いに殺しあう人間の姿は、モンスターを殲滅する姿よりもはるかにおぞましく、戦慄を覚えるものです。さらに、今回はそのモンスターまでもが人間の似姿であるということ。まさに悪夢としか言いようがありません。

もちろん本編の恐怖は、モンスターだけでなく「未知の洞窟」という環境にも原因があります。体ひとつしか入らないような細い穴に体をねじ込むという行為。「苦しい、息ができない」…主人公のサラには、息の詰まるような一年間と、この洞窟の閉塞感が重なったとしても無理はありません。

また、他の仲間にとっても、何が現れるか分からない「闇」への恐怖は、深い動揺を呼び起こします。誰がどこにいるのか、誰が敵なのか―人間の根源的な恐怖は、「闇」にあるとも言われます。

また本作は、同時にトラウマ=恐怖の克服劇とも捉えることができます。モンスターの姿が明らかになり、仲間殺しを越えた先の、強い人間像。復讐によって攻撃性を増した・・と比較されることで、「克服する」ことがどういうことなのかを示してもいるようです。それにしても、後半のサラは「地獄の黙示録」か「ランボー」か、というくらいの変わりよう。タンクトップがよく似合う。

洞窟―閉所という、象徴的な設定で展開されるこの作品。
塚本晋也監督の「HAZE」(2005)を具体的に肉付けするとこうなるんだろう、という感じです。血で血を洗う恐怖。見ていて体温が2度は上がりました。
by murkhasya-garva | 2006-08-29 22:22 | 映画