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by murkhasya-garva
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メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー

「メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー」(2005)
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メタルファンの人類学者、サミュエル・ダンが、「なぜ“メタル”は嫌い、非難されるのか」をテーマにヨーロッパ各地を巡り、フィールドワークを行った映画。
京都みなみ会館にて8月23日に鑑賞。初日だし大入りかと思っていたが、たったの20人弱。少ねえな…


ここまでパワフルに、直接感覚に語りかけてくる作品はそうそうない。ほぼ全編にわたって用いられるヘヴィメタル。特にオープニングは傑作だ。サム・ダンが旅立つ、その後ろ姿と共に激しい音楽が流れる。ありありと感じられる躍動感と、これからの旅への期待は、製作者である彼の、ヘヴィメタルへの深い愛情を強く感じる。このシーンは感動的ですらあり、思わず身もだえしそうになったほどだ。

しかし、確かにヘヴィメタルは、周囲でも聞く人がほとんどいない。暴力的、悪魔的、下品、そんな言葉が付いて回ると共に、その外見の凄まじい異形は否応なく人の目を引く。ぼく自身、高校の頃に興味本意で、マリリン・マンソンの「ジーザス・クライスト・スーパー・スター」を借りて聴いたものの、凶悪すぎて吐きそうになった記憶がある。

最近コミック化された「デトロイト・メタル・シティ」は、ヘヴィメタルの中でも過激なパフォーマンスを行うデスメタルを扱ったギャグマンガ。これが予想外のヒットを飛ばした。また、以前からメジャー音楽の中にもジョークとして混ぜられることもあり、知名度は決して低くないといえる。しかし問題は、先にも述べたように、この35年間、世に「認知」されてこなかったことなのだ。それは一体、何故なのだろうか。

筋金入りのヘヴィメタルファンであるサム・ダンは、この問題に大真面目で取り組む。ヘヴィメタルの歴史、背景、歌唱法、環境、悪魔崇拝との関係…一つずつが人々の証言と資料によって解き明かされていく。
例えば、音楽の性質は、重低音をベースに用いられることから、ワーグナー、ベートーヴェンとの共通性が指摘される。また一時期から、ブルース・ディッキンソン(アイアン・メイデン)がオペラの歌唱法を取り入れるようになって以来、急速にこの方法が普及したというのだ。

しかし、より驚かされるのはファンの言葉だ。わずか13歳の少女が、自分の言葉で自分の立場をはっきり表現する。「自分の言葉で表現できない人たち」からの逸脱者であり、ヘヴィメタルファンであることに誇りを持っている。また、他のファンは「既存社会との決別」と言う。押し付けられた未来ではなく、自分自身で将来を選択する、という強烈な意思表示…
「決してお前の言う通りにはしない」 この歌詞の持つ意味は思った以上に深い。

何よりも、35年間社会に認知されなかった「ヘヴィメタル」というジャンルからは、表面上の過激な表現と共に、通常目にしないほどの強い「怒り」のエネルギーを感じる。一般的に、ヘヴィメタルは暴力や犯罪の直接の原因である、と考えられがちだ。もっとヘヴィメタルに関わる人たちの言葉を聞き、姿勢を見れば、そのような短絡的な判断はできなくなることだろう。

ヘヴィメタルに興味があろうとなかろうと、この作品は、自分が「逸脱者」であることを意識している方には共感できる点が非常に多いことだろう。サム・ダンの旅は、思った以上の感動を呼び起こす。
ヘヴィメタルを選び取ることは、彼らにとって「生き方を選択する」ことなのだ。
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by murkhasya-garva | 2006-08-23 17:14 | 映画