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by murkhasya-garva
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ローズ・イン・タイドランド

「ローズ・イン・タイドランド」(2005)
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テリー・ギリアム監督の最新作。今回は「未来世紀ブラジル」などのような、今までのような現実と幻想の間に挟まれる人間ではなく、現実と幻想を隔てなく行き来する子どもの世界をありありと描き出します。
主役のジョデル・フェルランドが、無邪気にもすばらしく整ったかわいらしさ。


前回観た「未来世紀ブラジル」といい、テリー・ギリアム監督の作品には、徹底した姿勢を感じます。ハリウッド映画のようないわゆる「お約束」に堕ちず、テーマを主張するためには自分の選んだ道を突き進む。観客の機嫌を伺おうなんて思っちゃいない。そんな監督だからこそ、作りえた「タイドランド」=現実と幻想の境界。観る者を混乱、いや夢の世界に否が応でも連れて行くのです。

本作は幼いジェライザ・ローズ(ジョデル・フェルランド)の夢うつつの世界観を描きだします。このことを踏まえて、本作の設定を考えてみます。
彼女はジャンキーの両親に育てられます。この類の設定は、通常ならば虐待と克服の物語のようなものになりがちです。しかし本作では、彼女の両親は、子どもの夢を笑い飛ばすどころか、「いつまでも夢を見ることを忘れない両親」であり、閉鎖的な家庭環境は、ローズの世界観を醸成する安全な場所だったといえます。

彼女の世界は、「不思議の国のアリス」のような夢の中の世界ではありません。あくまで現実世界でのことなのです。しかし幻想は、現実世界から簡単に染み出してくる。まるで地盤が液状化を起こすように、豊穣なイメージが堅固な現実からあふれ出してくるのです。そんな世界で、ローズはすいすいと楽しそうに泳いでゆく。これを一般的に人は「狂気」と呼びます。
ですが、果たして子どもの豊かなイメージの世界を「狂気」と呼んでいいのでしょうか。

作中でローズがウサギ穴に落ちるシーンがあります。「不思議の国のアリス」でも、アリスはウサギ穴に入り、目くるめく夢の世界を体験したのでした。つまりウサギ穴、すなわち夢の世界は、彼女たちにとってイメージの世界であり、それを捕まえて「狂気」と呼ぶのはあんまりだと思うのです。本作は、子どもたちの持つ能力―夢見ること、その中でも生きる術を見つけること―これらを肯定的に映し出した作品なのです。

本作は、至るところに幻想世界への門が口を開いています。例えば「ナルニア国物語」のような衣装たんすの扉、北欧の王国ユトランド、「不思議の国のアリス」のウサギ穴、「パイレーツ・オブ・カリビアン2」の沈む幽霊船に似た、傾き沈む家、など様々な表現が私たちを幻惑の世界に引き込みます。
最後まで目のくらむような夢の世界、見てみてはどうでしょうか。
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by murkhasya-garva | 2006-08-11 22:38 | 映画