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by murkhasya-garva
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<アリス&ザ・ワンダーランド Night>未来世紀ブラジル

「未来世紀ブラジル」(1985)
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ロバート・デ・ニーロが出演し、鬼才、テリー・ギリアムが監督を務めるSF大作。これを観ずしてSF映画を語ることなかれ。映画評論でしきりにテーマに挙げられ、金字塔とまで言われた理由が分かります。




近未来、人々は政府に全ての情報を管理されていた。情報管理局の役人のサム(ジョナサン・プライス)は、銀色の鎧をまとい、空を飛ぶ夢をよく見るのだった。ある日、役人が叩き潰したハエのせいでインプットミスが起こり、靴職人のバトルが修理工のタトル(ロバート・デ・ニーロ)と間違って逮捕されてしまうという事件がされてしまい…。

・・・これが人間の為せる業か!!
観終わって、脳天を打ちのめされたようでした。転回に次ぐ転回。ほとんどの破綻なく、息も継がせず進むストーリー。朝5時半という、かなり眠い時間でもあるに関わらず、ますます目が覚めてゆくあの興奮は忘れることができません。こんな映画が観たかったんだ。

まず目を引くのが、作中の情報、もとい小技の多さです。近未来社会の有り様が、事細かに描写されているのです。盲目的に若さを求める老人たち。イメージだけで楽しむペースト状の食べ物。テロを傍目に優雅にディナーを楽しむ人。紙面の情報に依存しきって無能化した政府・・・。
こう小技が多いと、ストーリーは脱線しないものか、と勝手にハラハラしていた位です。
これらの細かい設定は、この作品の主軸とも言うべき世界観を、外側から分厚く肉付けしてゆきます。というより、これらの設定がなかったら、本作のリアリティは成立しなかった、といっても過言ではありません。

それに、近未来が舞台とはいえ、制作したのは1985年。もう少しハイテクな機器を揃えてもいいはず。タイプライターやむき出しになったタコ足のようなダクトが、レトロ感たっぷりに据えられているのを見ると、監督はわざとフェイク・フューチャー(…造語です)っぽく設定したように思われます。むしろ逆に親近感やリアルさを抱かせます。

ともすれば、細かい設定を追うだけで満足してしまい、主題が何かを見失いがちです。
本作のキーワードは「情報管理社会」。自由を奪われた人間の運命が描き出されています。便利さと引き換えに人間は自由を失い、本質的な性質である「欲望」さえ操作されてしまう。人々は、あらゆる手段をとって情報局の管理から逃れようとしますが、強力な国家の前にはなす術もありません。
ラストで、衝撃的なまでの主人公の運命が描かれます。彼の姿は、情報管理社会の抑圧下に生きる人々の運命をも端的に表現しているようです。

それにしても、なんという豊かな想像の世界でしょう。今でもSFは、どうしても監督の限られたイメージでとどまってしまい、チンケなものが目立つジャンルです。そんな中で本作は、段違いのボリュームと整合性、そして演出によって、ひときわ異彩を放っています。テリー・ギリアム監督の才能を感じる傑作。
これこそがSFです。これを見なければSFは語れねえ。
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by murkhasya-garva | 2006-08-04 18:24 | 映画