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by murkhasya-garva
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<アリス&ザ・ワンダーランド Night>アリス

「アリス」(1987)
b0068787_1016836.gifヤン・シュヴァンクマイエル監督による「不思議の国のアリス」の映像化。原作の想像の世界を舞台に、奇妙なオブジェと彩りが散りばめられます。ヤン監督の映像作品は、「生々しい」「悪趣味」「エグい」と評されもしますが、その独自の世界観には観る者を引き込むような魅力があります。
本作はヤン監督が手がけた初の長編作品。


この作品が制作されたのは1987年。確かに映像技術は古さを感じさせるものの、その拙さをも含めて、この奇妙な世界を構成する不可欠なパーツのように思えてきます。数多くの短編を作ってきた彼一流の表現力は、この長編作品でも存分に生かされているようです。モノが命を吹き込まれて動き出すとき、そこにはブラックで、コミカルな世界が繰り広げられます。

本作では、監督独自の、非常に濃密な不思議の世界=<ザ・ワンダーランド>が色鮮やかに描かれます。ウサギの置物が動き、骨が卵から生まれ、缶詰からはゴキブリがあふれ出る…観る側は悪趣味なアイデアの海に呑まれがちですが、本作はかなり意識して現実と幻想とを分けているようなのです。

例えば、ストーリーの間に何度となく、ナレーションの映像が挿まれることがあります。恐らくアリスと思われるその口が、登場人物の台詞を代弁するのですが、ここで「物語が語られている」のだという意識を、観る側は明確に持つことになります。また、アリスが引き出しを開けるシーンがしつこいほど繰り返されたり、命を吹き込まれたモノたちが敢えてデフォルメされていたりと、これが幻想の世界であるということを表現の上でも特に強調しているふしがあります。

映像技術についても注目です。モノが動く非現実のシーンはコマ撮りで撮られます。その一方で生身の登場人物であるアリスは、普通の映像でなめらかな動きをするのですが、この技術の差が、見た目にも明らかに現実と幻想の世界を分けてしまうのです。

そして次第に、幻想は現実に取って代わり、忍び込むように現実を侵していきます。アリスが最後に呟く、「首をちょん切らなきゃ」という言葉は、監督の見せる悪夢の境地なのではないでしょうか。

他のファンタジー作品にも、本作品に似た表現がよく表れます。例えば、衣装たんすの中をくぐり抜けるシーンは「ナルニア国物語」に似ています。それに、何度も引き出しを開けて別世界へ行くという行為は、その繰り返しという行為において、「緑玉紳士」で繰り返し扉を開けて別世界へ行く、という行為につながってきます。

恐らくこれ以降の作家たちに大きな影響を与えたであろう「アリス」。
その目くるめく奇妙な世界を一度は体験すべし。
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by murkhasya-garva | 2006-08-01 10:20 | 映画