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by murkhasya-garva
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闇打つ心臓 Heart,beating in the dark

「闇打つ心臓 Heart,beating in the dark」(2005)
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1982年の同名作品のリメイク。しかしただのリメイクではない。オリジナルで出演した内藤剛志の、今回の作品制作への意見が波紋を広げる。映画を通じて、実際に20年を経た男がどのように変わったか。



これは現代社会にオリジナル作品を投影したフィクションであると同時に、異なる世代間の葛藤と理解を描き出したドキュメンタリーでもある。

図らずも面白い作品になった、という感じの作品です。もっとも、ハプニングもひっくるめて一作品にしてしまおうという長崎俊一監督の判断もさすがです。だいいち、内藤剛志がリメイクに物申す、なんて言ってしまえば聞こえはいいが、単なる内輪もめでしかないわけです。それに巻き込まれた本来のキャストの若手俳優なんてたまったものじゃありません。
しかし、今回はまさに、その世代間の葛藤がテーマとして生きているというのが魅力的なのです。

本編では、映画の制作過程が同時に織り込まれて展開します。
「20年前の俺をぶん殴ってやりたい」(内藤剛志)
彼にとって、「闇打つ心臓」(1982)とは単なる通過点ではなかったようです。23年たった今でも、当時をたびたび思い出す。伊奈子を演じた室井滋も、あのときのことが忘れられない、ということを言います。子殺し、という重い十字架を背負った若い夫婦が、闇に隠れて息を潜めている――オリジナルを見ていないので何とも言えませんが、たったそれだけの情景が2人に深い闇を落としたことは間違いありません。

「内藤さんは俺をぶん殴りたいらしいしさ」(本田章一)
一方、本来の主役であった本田章一、江口のりこは内藤の突然の乱入に戸惑いを隠せません。内藤の本作への思い入れが激しいほど、彼らのストレスは増してゆきます。上の吐き捨てられた言葉は、あきらめと同時に、彼への苛立ちや非難が渦巻いた、端的にも強烈な台詞です。

夜闇が深まり、内容の上でも盛り上がりを見せる部分に近づくに従って、2人の男女の描写は互いに酷薄なものになってゆきます。リンゴォたちは、今までの苦悩を半ば「自分の言葉」で語り(だからこそ自慰的にも見えるが)、透と有紀の独白では、現代の若者の倫理観の描写と同時に、逆に「語らせられている」印象が強く、痛々しさが響いてくるものでした。特に有紀が直立不動で歌う「traveling」は見ていて辛い。

「内藤さん、殴って下さい」(本田)
自分自身が葛藤を抱える内藤の姿が、若い世代にも共感されたのでしょうか。鑑賞時は上下関係の義理としか思えなかったのですが・・・。これが、やまだないとの評する「今のナイトーさんを許しちゃった」瞬間なのでしょう。様々の軋轢の中で、互いの結節点を見つけたとき、既にラストは決まっていたのかも知れません。

「子殺し」という罪を背負った4人の男女の出会い。それは互いの許しの場であると同時に、世代間の理解と共感の場であり、それと同時に4人の未来への出発点でもありました。
フェイクドキュメント風の形を取った今回のリメイク。手法の新鮮さもさながら、類まれな心情描写が目を引く作品でした。
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by murkhasya-garva | 2006-07-21 11:07 | 映画