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by murkhasya-garva
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タイヨウのうた

「タイヨウのうた」(2006)
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新人歌手のYUIを主演に起用し、話題をさらった作品。関西では残念ながら上映は終わってしまいましたが、今度は沢尻エリカ主演でテレビドラマ化(7/14(金)~)されています。





上映が終わったのに、誰も席を立とうとしなかった。

今まで観たことのない光景でした。普通はスタッフロールが流れると同時に、早々と出て行くカップルが何組かは必ずいるというのに、照明が付いても皆が席を立たないでいるのです。出ないの?という風な表情で後ろを振り向く人が出るくらい、静まり返っていました。
個人的には、そこまで感動する作品というほどでもなかった。それなのに、なぜこんなにも余韻を噛み締めたくなるのだろう。

主演を張るYUIは、あくまで本業は歌手。演技も新人によくある、訥訥としたものでした。ストーリーも「世界の中心で愛を叫ぶ」に多少似ていたように思います。内容としてはいまひとつ魅力に欠ける、そんな作品なのに、予想以上に後を引いた。その原因の一つには、「バランスの良さ」が挙げられると思います。

YUIは真木よう子に少し黒木メイサが入ったような、愛らしさの残るルックスやかわいらしい声が魅力的。しかし、もちろん顔だけで評価が上がるはずがありません。「海猫」「電車男」の伊東美咲のように。YUIも多分に漏れず、表情の乏しさ、感情表現の拙さなど、初々しい演技が目を引きました。あまりの拙さに、対照的なキャラを演じた塚本高史や、ベテランの岸谷五朗や麻木久仁子がオーバーアクションに見えて、逆に浮いていたくらいです。

普通ならその時点でアウトなのですが、ここで注目すべきなのはYUIの役柄です。XP(色素性乾皮症)という不治の病を抱え、外出できない彼女は、幼なじみの美咲(通山愛里)が唯一の友達。夜の公園でストリートライブをするのが楽しみという彼女が、普通の女の子とは少し違う性格でも、不思議ではありません。今まで我慢を強いられてきた子にとって、感情表現は苦手にもなるでしょう。また、XPという病気が、精神障害を誘発する可能性を持つという点も重要なファクターです。
つまり、彼女の置かれた特殊な状況が、YUIの演技を十分すぎるほどフォローしてくれているのです。

また、この作品自体のバランスの良さも重要です。
まず、YUIの歌が、薄幸の少女の歌うものとして見事にマッチしています。か細くて切なげ、しかしどことなく力強い。ヒマワリが描かれた看板の前でのライブは見事でした。また、彼氏役の塚本高史が、バカだけど素直という対照的な性格だったことや、スタッフロールで余情を促すような静かな音楽を使ったことも作品の印象を際立たせる要因になっています。

そして作品の素地を形成する、王道パターンの演出。後半では我慢がならないほどクサい台詞、ベタな台詞が連発しますが、そういうのを含めて一般受けする内容です。YUIの今後のヒットを見込んで作られたとしても、十分な内容になっているはずです。となると、この作品は予想以上に手堅く作られていたのかも…。

作品自体はバランスが優れて良かったけど、手堅く作るあまりベタさが目立ってしまい、満足できるには至らなかった。その消化不良感を抱えて、観る側は作品が持つ以上の余情、余韻を求めてしまった・・・というのは考えすぎか。
ともあれ、期待以上に好い感じで見終わることができて、満足のいくものでした。
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by murkhasya-garva | 2006-07-18 13:34 | 映画