休止中。


by murkhasya-garva
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

花よりもなほ

「花よりもなほ」(2006)
b0068787_1892698.jpg考えてみれば、メジャー作品の感想をほとんど書いていないことに気付く。いやさね、多少は観ているんですよ。でもいざ書く段階になったら、インパクトあったし後回しでも覚えてるだろう、とか思っていてそのままお蔵入り、という最悪のパターン(+書いても悪文)になるわけです。ほんと、集中力があってもう少し時間を要領よく使えたら…とよく思います。賢い人がうらやましい。


さて今回観たのは、「誰も知らない」で有名になった是枝浩和監督の作品です。
第5代将軍徳川綱吉公の時代、江戸の貧乏長屋で父親の仇を探す侍が住んでいた。ちょうどそこには、吉良討ち入りの機をうかがって今か今かと待つ赤穂浪士も身を潜めている。しかし貧乏長屋の住人はそんなこともお構いなし、毎日気楽に過ごしていたが…

以前見た時代劇ものでは、「るにん」が群像劇として人々の生き様を描き出しました。「花よりもなほ」も、ところどころで脇役に脚光が当たり、人間ドラマが展開される点で群像劇といえます。今回は、宗左衛門の仇討ちを中心に、周りの人々の思いが程よく絡み合います。

しかし、なぜ現代に時代劇を作ろうとするのか。それは人気作品の劇場版という形もありえるのですが、そこに何らかの意図、メッセージを込めていることがよくあります。過去の世界を舞台にして、現代の情勢や思想が戯画的に表されるのです。また、特に江戸時代は現代の情勢とよく似ていたとも言われ、よく用いられるようです。今回は「仇討ち」という、太平の世にわざわざ生死をかける行為を行うことの意味を、問いかけています。しかもそこで比較されるのは赤穂浪士。毎年テレビで流される美談が、引き合いに出されるのです。

是枝監督は前回の「誰も知らない」では、見放された子どもたちが強く生きようとする姿を描きました。今回も「生きる」ことに焦点を当てて作品を展開します。
―「義」という一点において仇討ちは正当化されるが、たった一つの命をなげうってまでして行うものなのか?死して花を残すより、生きて実をなすほうがよくないか?― 宗左衛門たちがどのような姿であろうとも生きようとするほどに、「それでも生きる」ことの大切さが浮き上がってくるのです。

そして彼の周りでは、長屋の住人たちが人とのつながり、生きる執念を様々な形で演じます。そこには曲がりなりにも生きることの肯定的な視線があります。時には笑ってしまうほどの図々しい前向きさは、生きることのよさや大切さを、観る側の心に沁みこませていきます。

長屋の住人を演じたのは原田芳雄や香川照之など味のあるベテラン俳優、そして千原靖史や上島龍平などコミカルなキャラの芸人など。それぞれの個性が光る役柄がとても印象的でした。
観終わった後は、強張った気持ちもいつの間にかほぐれているような、温かい作品です。少し長いですがぜひオススメ。
[PR]
by murkhasya-garva | 2006-06-30 18:12 | 映画