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by murkhasya-garva
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ファザー、サン

「ファザー、サン」(2003)b0068787_9344783.jpg
去る6月18日に大阪のシネ・ヌーヴォにて「バッシング」と合わせで鑑賞。特集で「ソクーロフ リスペクト」を催していたのに結局1つも観にいけませんでした。
本作は2003年カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞など他多く受賞し、各地の映画祭では「ソクーロフの最高傑作」と絶賛されたそうです。

父と子の関係を濃密に描いた作品。母の姿は一度も出てこず、その代わりに父子の姿が母子、兄弟、果てには恋人のような関係にまで変化していきます。男性特有の肉体的な強靭さと、きわめて女性的な繊細さが同居し、お互いに愛を確認するというある種独特な空気があるのです。そこには性的な描写こそありませんが、2人の光景はとても肉感的であり、かなりエロティックです。
実際に隣の家の女性は、2人の仲の良さを見て「父子は兄弟じゃないのよ」とは言いますが、それまでのカラミを見ていると、じゃあ恋人同士?と聞きたくなるほどの親しささえ感じます。

息子は父親に対して、愛を試すかのように挑発的な態度を取るようになります。友人とあからさまに仲良くして見せるなど、容易に「父子」を「男女」と読み替えられそうなシーンがよく出ます。でも2人の関係はそう単純なものではない。ちょうど互いに子離れ、親離れをする時期に起こる、父子と恋人のはざまを揺れ動くような微妙な心理状態が現れているのだと思います。

母親不在、という状況はその関係をより純粋にするために設定したものでしょう。息子の「母さんはどこ?」という問いに父が答えないのは、“母は存在しない”という意思表示であると同時に、父親がまた「母親」でもあること、さらには父親の持つ母性愛を明らかにするのに役立っているのです。

また、町と父を比べるシーンでは、「父と子」の違いが明らかにされます。町について語るとき、それは同時に父を語ることであり、町の持つイメージは恐らく父にも当てはまるのでしょう。

暗喩に満ちたストーリーだからこそ引き立つ幻想的な映像。現実なのに、2人の姿は時々歪み、ぼやけて映ります。一体本当に現実なのか、もしかして初めから夢を見せられているのか。父子のある種異常なまでの関係は、私たちの意識下に滑り込むかのように形を変えながら目の前に現れるのです。

よくもまあここまで緻密に作りこんだものだ…と後になって感心するような作品です。もちろんその美しく、刺激的な映像も見ごたえがあります。ぜひ観てみて下さい。
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by murkhasya-garva | 2006-06-23 09:36 | 映画