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by murkhasya-garva
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バッシング

「バッシング」(2006)
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2004年に起きたイラクでの日本人人質事件を題材に作られた作品。その内容から日本での公開が見送られていたが、第6回東京フィルメックスでグランプリを受賞したのをきっかけに公開が決定した。日本社会を痛烈に批判し、大きな問題を投げかける作品。


今回大阪まで足を伸ばし、シネ・ヌーヴォで初鑑賞。入会後1本目の作品となった記念的作品です。雰囲気は東京のイメージフォーラムに似ていて、内装がシンプルでシック。入り口に映画本ほか多数のグッズが並べられていて、映画好きを触発します。劇場内も「泡」をイメージしたようなデザインで、まさに夢うつつ、という感じ。

戦時下の中東でボランティア活動中、武装グループに人質に取られた有子。無事に解放されたものの国内では“自己責任”を問われ、激しいバッシングを受けていた。なぜ彼女がボランティアをする必要があるのか、日本中に迷惑をかけて何とも思わないのか、自分の身くらい責任を持って管理できないのか・・・

実話をもとにした作品。その心情描写はひたすら重く、押しつぶされるような感覚に陥ります。生身の人間が受ける数々の非難。彼女は英雄でもなく、むしろ国内で国辱扱いすらされた、ただの欠点だらけの人間。何の美化もなく、ただ苦悩する彼女の姿が淡々と描かれます。そんな彼女が何を思っていたのか、何を選択したのか。

恐ろしいほど生きることに不器用で、しかし中東の再訪に望みをつなぎ、必死に生きる有子。彼女の周りの、心ない者の純粋な悪意、無自覚な者の刺さるような言葉、良く思わない者の明らかな拒絶。カメラの視点はまるでドキュメンタリーを取るそれであり、突き刺さるように迫ってきます。

自分の部屋から光を浴び、海を臨む彼女の目は、濁ったガラス玉のように深い哀しみを秘め、真っ直ぐに、しかしうつろに遠くを見つめます。彼女が海岸に立つ姿も何度も映されますが、「ここではない、あの場所」を求める者の孤絶感、遊離感が、ひしひしと、伝わってきます。

時折(劇場内のエアコンの音か)、空ろな音が聞こえてきます。それは、有子の心の空洞の音のようであり、また、別の世界とのつながりを求める声であり、さらには、遠くの国とつながるあの海の音のようでもあります。

苦悩に何度も何度も歪む口元。たまに見せる、深い傷のような笑顔。矛盾だらけの彼女の言葉。決して、主人公に優しくはない日本。この作品を通じて自分たちが持っていた意識、そして「日本」という国に住む者としての性質を考え直させる出来になっています。観るべし。
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by murkhasya-garva | 2006-06-19 08:53 | 映画