休止中。


by murkhasya-garva
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

初恋

「初恋」(2006)
b0068787_131038.jpg最近、ATG Film Exhibitionで70年代前後の空気を吸い込んでしまい、病み付きになってしまった感があります。あの頃の、何かを必死に求めていたような、荒々しく、しかし繊細な雰囲気は、観ていると懐かしい気分を通り越して、奥底から熱いものがこみ上げてきます。


3億円事件もその頃―1968年12月10日に起こりました。

初恋と戦後日本の大事件。それだけでこの話は何となく想像がつきますが、今回はそれ以上にショックを受けました。みすず役の宮﨑あおいが、すごいインパクトがある。行き場のない環境で、心の底に張り詰めたものを抱えて生きる少女。彼女は「NANA」で一躍有名になったけど、やっぱり彼女のハマリ役はこういうのですよね。そして混乱していた60、70年代のあの緊張感。ぴったりじゃないですか。

当時の環境、少なくともネオンはCGなんでしょうけど、薄暗がりの汚れ具合や、ビラの残り具合などけっこう丁寧に作りこんであって、雰囲気が出ています。他のキャラも、会話や視線からも最近の若者にないような距離感が感じられます。吐息がかかるようなところで、じっと目を見つめながら話すようなある種の暑苦しさがあるんですね。そしてどことなく、しかし確実に誰もが感じている社会の閉塞感や苛立ち。たまり場のバー、“B”の空気がそんな感じです。

抵抗しようのない運命に流され、日々を確実に生きる若者の姿が、有無を言わせないテンポで描写されます。後半で出てくる計画実行の光景は必見です。とめどなく続く、緊迫した時間が、時計の秒針の音となって重くのしかかってきます。苛立ち、恐怖、あせり、混乱…これは単なる盗みではなく、彼らにとって国家への挑戦であり、また自分の存在理由を確認する行為なのです。

みすずは、「私は『府中三億円強奪事件』の犯人だと思う」と語ります。その言葉と共に現れる当時の写真、そして、ヘルメットの下から現れる長い髪の人物の映像。この瞬間、虚構が現実に忍び込むのです。
虚構が現実であるかのように錯覚する瞬間、それはエピローグにも現れます。それは“B”のグループの消息。白黒の写真と彼らのその後を載せることで、にわかに現実の匂いが立ち上るのです。そこで起こる激しい感情移入。あのやりきれない思いを抱えた若者が本当にいたのかと思うと、その胸苦しさはにわかに、涙を誘います。ほぼ同世代であるからこそ、そう感じるのかもしれません。

大胆な推測と内容。そして等身大の若者の痛みが描かれているからこそ、この作品に強い愛着を覚えてしまうのかもしれません。これは特に若い世代に観てほしい作品です。宮﨑あおいの熱演にも注目。今までの出演作の中で一、二番の出来かもしれない。
[PR]
by murkhasya-garva | 2006-06-16 01:36 | 映画