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by murkhasya-garva
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浮雲

「浮雲」(1955)
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同志社の寒梅館ハーディーホールにて、京都みなみ会館共催の「成瀬巳喜男の世界」が催されました。6月13日には「浮雲」「乱れる」を上映。
また、16日には「君と別れて」「夜ごとの夢」が上映されるそうです。16日(金)の2作品は、無声映画でピアノ伴奏付き。みなみ会館では上映されません。




毎年、この時期に「成瀬巳喜男の世界」で上映されるのですが、観たのは今回が初めて。チラシにも「鋭い女性描写が他の追随を許さない監督」と評されています。若松孝二は「日本に稀有なフェミニズムの映像作家」(!)と四方田犬彦氏に評されていましたが、さて今回はどうなんでしょう。

本作品は、戦中戦後の混乱期に、愛欲のままに流されていく男女を見つめたもの。
まず第一に高峰秀子です。彼女が年齢不詳な感じだけど、絡みつくような色気を漂わせているのが何ともいえません。いかにも女性らしい仕草を、嫌味な感じを持たせずに演じています。どうしようもない男に惚れきった美貌の女性、その切なげですがり付くような目つきにクラクラします。そもそも表情がすごく豊かなのです。うまい。本当にうまい。

また、作品の初めから気付かされるのは、撮影される背景です。遠くに映し出される木々や町並み、どのシーンを取っても、登場人物と背景が共に生き生きとした存在感で映し出されます。背景は登場人物の気持ちを象徴していて、しかも背景だけでもそれ以上の美しさを持っているのです。例えば、富岡(森雅之)との出会いをゆき子(高峰秀子)が回想する場所でのシーンは、これだけで完璧な美しさがあります。

人物、そして人物関係の撮り方もすごいですね。実際はかなり艶っぽい話なのに、全然そんな情景を映しません(当たり前)。代わりに、先にも言ったような女優の表情や仕草、そしてそれを匂わせるような雰囲気がすべてを物語ります。情事のシーンも、ただ脱衣所にある2人の服が入ったカゴをじっと映すだけです。もうそれだけで、十分なんです。最高に雰囲気が出ます。

音楽も、作品を引き立てるのに重要な役割を持っています。オープニングのスタッフロールから最初のワンシーンに移るとき、その壮麗な音楽は途切れることなく流されるのですが、観る側も気持ちを途切れさせることなく、違和感を持たずに次に移れるのです。
普通はワンシーンワンシーンで情景が変わると同時に気持ちも切り替わるものです。しかし、この作品に限って言えば、場面転換は必ずしも気持ちの転換ではありません。

ため息が出るほど美しい情景とストーリー。ど素人がぐだぐだと言いましたが、成瀬巳喜男の作品が今まで残っている理由が分かる気がします。
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by murkhasya-garva | 2006-06-14 21:34 | 映画