休止中。


by murkhasya-garva
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

アンジェラ

ものすごいネタバレです。ご注意を。
「アンジェラ」(2005)
b0068787_1291145.jpg
ギャングや殺し屋相手に多額の借金を作ってしまったアンドレ。48時間以内に借金を返さなければ命がないといわれ、絶望してセーヌ川に身を投げようとする。そのとき、突如現れた女が自分よりも先に川に飛び込む。彼女を助けるアンドレ。長身、ブロンドの美女の名は、アンジェラ。


リュック・ベッソンといえば、一時期「レオン」や「WASABI」で話題になりました。若い世代はかなりの人が見たんではないでしょうか。他の作品をほとんど見ていないので彼の作品群でどうこう言えませんが、結論から言わせてもらうと、「そりゃないだろう」。
リュック・ベッソンの願望が詰まった作品、そういわれても仕方ない。とても象徴的な意味合いをもった切り口を、彼の甘ーい願望でコテコテに仕上げた作品です。

主人公は、無能でチビの醜男。自分に嘘をつき続け、どうしようもなくなった男。そんなお先真っ暗の彼の中には、外見とは正反対の内面(アニマ)があると突然告げられるのです。劣等感に苛まれる人間にとって、これ以上のカタルシスはありません。恐らく、アンジェラ=アンドレという名前の類似もこれになぞらえたものでしょう。実際に彼女は言います。「私はあなたの半身、私はあなたの影」。

誰の中にも天使は宿る。そう言いたいがために監督は様々の設定をしたはずです。原題の「ANGEL-A」は、まさに彼女が作中の限定された存在ではなく、任務として遣わされた天使の中の1人にすぎないこと(匿名性)を示しています。だからこそ、鏡に向かって自分自身に「愛してる」と告げる姿が真に迫ります。もっとも、あまりにベタ過ぎて噴き出していましたが。

まさに、現代を舞台とした宗教的な物語。昔よりも物質主義的になった人間が信じるものは、目に見える証拠なのだそうですが、アンドレは驚くほどあっさり奇蹟を受け入れます。
いやいや、もっと疑えよ。
ともあれ、「自分を愛する」それ自体が神の愛=奇蹟を受け入れること、そんな勢いで彼は変化し続けます。また、古典的なパターンでこの作品を古臭くしないためにも、アンジェラにはより人間的であることが要求されます。しかし、同時にこれこそが問題でもあります。

ここで天使を人間臭くすることは様々なリスクを伴います。いわばアンドレの代弁者であったアンジェラが「自分」の言葉で語ること。それは、彼の内面が語るのか、彼女という個人が語るのかという点で混同が起こるのです。感情移入が難しくなるところです。
また彼と彼女が別の存在になることで、単なる異性間の恋愛にも成りさがるのです。初めに掲げた崇高なテーマが崩れるんですね。別のお決まりパターンに走ってしまうと、もう後が見えています。

クライマックスは救いようがないほど陳腐だし、突っ込みどころ満載です。地に堕ちた天使、というこれまた難しいネタをいとも簡単に処理する監督の単純さは、本当に脱力させてくれます。こんな作品を10年も温め続けてきたリュック・ベッソン監督の気が知れません。少なくとももう少しひねってほしかった。

こんな甘ったるい映画観ていられない、そう言わずに観てほしいです。自分の願望を正直に出した結果、破綻してしまったという最たる例じゃないでしょうか。情景が美しければ美しいほど、彼がこの作品に本気だったことがうかがわれます。
しかし、先にも言いましたが、常々劣等感を意識する人には最良の作品となるかもしれません。こんなにも「自分」を直接に肯定する作品はそうそう見当たらないですよ。
[PR]
by murkhasya-garva | 2006-06-04 01:31 | 映画