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by murkhasya-garva
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<歌う!フレンチ・シネマ・ナイト>焼け石に水

「焼け石に水」(2000)
b0068787_0474926.jpg5月27日に京都みなみ会館で<歌う!フレンチ・シネマ・ナイト>で1本目に上映された作品です。フランス産のミュージカルといえば、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の「シェルブールの雨傘」「ロバと王女」を思い出します。今回のオールナイトはフランソワ・オゾンの「ぼくを葬る」公開を記念した企画だとか。一味違う雰囲気が楽しめました。

1970年、ドイツ。20歳になるフランツは、中年男性のレオポルドに誘われて一夜を共にする。以来レオと同棲を始めるが、2人の蜜月は長く続かない。ある日、元婚約者アナからフランツに連絡があり、再開を果たすが…
本作は2000年ベルリン国際映画祭テディ2000賞受賞。

「さすがフランス映画は違う…」知人が呟きました。良くも悪くも、恋愛のもつれを微細に描き出すことができた作品です。人間関係の極地ともいうべき関係は、観る側に何ともドロドロとした印象を与えます。これがフランスの文化なんだ、といわんばかりに愛憎が繰り広げられるわけです。背徳とまでは行きませんが、不条理なまでの展開になす術もありません。

レオポルドの部屋を舞台にストーリーは展開します。愛しあう2人がすれ違う様子を一室で描くという点で、最近公開された「ウォ・アイ・ニー」(2003)に似ている気がしましたが、それは前半だけ。後半からは別れた婚約相手のアナや捨てられた女性のヴェラが登場し、事態は複雑になります。そもそも同性愛が組み込まれるために少しややこしくなりますが、結局はフランツという青年の心の揺れを描いた作品と理解すれば、分かりやすいかと。

興味深いのは、各章で必ずベッドに横たわる人物とそれを見下ろす人物が映される点です。第1章ではフランツをレオが、第2章ではレオをフランツが、そして第3章ではアナをフランツが、と映され、それだけで立場関係が分かる。簡単に変わる立場を茶化すかのようにコミカルな音楽が流れるのが印象的です。

そう、この作品では音楽やダンスで、絡み合う人間関係を象徴し、時には事態を突き放して笑うように用いられるのです。抑圧された不満を表明するためかフランツは大音量でヴェルディのレクイエム、「怒りの日」を流します。または4人がそろった肝心な状況で突然踊りだすサンバ(「僕とサンバを踊ろう」トニー・ホリデイ)、レオとフランツの間で流すマーラーの「交響曲第4番ト長調」など…
これらの音楽があるおかげで、各々の状況がより分かりやすくなるようでもあります。

ストーリー全体を通して、象徴的な表現が台詞や各シーンにおいて多用されます。
ラストでは哀れなフランツを振り回すレオは暴君と化し、2人の女たちをも支配します。愚かで短絡的なアナとヴェラには、即物主義の王様であるレオに逆らう力はありません。ただ、フランツだけが夢と現実の狭間で迷い続けます。レオと対照的な存在であるからこそ、結局はフランツだけが彼の支配から脱出できたのかも知れません。

原作者のファスビンダーも、フランツを中心に置いてこの作品を作ったのかも知れません。思わず内容の細部の読みに目が行ってしまったこの作品、他に観た方はどういう印象を持ったのでしょうか。
「ぼくを葬る」に先駆けて、オゾンを知るために観てみるのもいいでしょう。
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by murkhasya-garva | 2006-05-29 00:49 | 映画