休止中。


by murkhasya-garva
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

ライフ オン ザ ロングボード

「ライフ オン ザ ロングボード」(2005)
b0068787_14293222.jpg1,2年前のサーフィンの映画で「ビラボン・オデッセイ」など何本か記憶があります。結局は観にいかなかったのですが、自然を映した作品はいいですね。壮大で解放的な広さを持った海は、人の心を癒す働きがあるのかもしれません。
そんな大らかな種子島の海に第二の人生を託した男の物語。


ついに定年退職を迎えた米倉一雄は、亡き妻の「種子島に一緒にサーフィンしに行こうって約束したの、覚えてる?」という言葉を思いだす。彼は妻との約束を果たすべく、昔持っていたロングボードを引っ張り出し、1人種子島へと旅だった・・・

作品自体の出来はそこまで評価できるものでもありません。登場するサーファーたちは基本的に演技がぎこちなく、滑舌がいい分だけ素人演劇っぽさが目に付きます。ストーリーもこれ以上ないほどのご都合主義。各シーンも使い古されたようなカットばかり。
しかも突然、浅香光代が過去の歴史を語りだすのにはたまげました。何の脈絡も無く。どこから圧力がかかったのか知りませんが、あからさまに蛇足です。

主演の会社を追われた男を演じるのはベテランの大杉漣。彼は体全体を使って力いっぱい演技するのですごく好感が持てるんですが、今回に限ってはそれが裏目に出たんじゃないかと。冴えないオヤジもひたむきな姿も上手いのに、どうも不似合いな感じがしてならない。もともと体格がいい分だけ、筋トレの必死さがすごくわざとらしかったり。

まともに見ていると始終不完全さが目に付くのですが、この作品の視聴者層を考えるとそんな作りにうなずけもします。主人公は定年退職を迎えた壮年の男。行き場のない鬱屈を抱えた会社人にとって、若い頃の夢を叶えようとする姿はまぶしく輝くのかもしれません。憧れの地、夢の人生、そんな世界を映した憩いのひと時を主人公と同世代の方に提供するという意味では成功していると思います。

そのため、所々に破綻があれどこの作品には監督の誠実さのようなものが見え隠れするのです。青々としてきらめく海や、なつかしのビーチボーイズの音楽は観る者を狭い空間から解き放ってくれるでしょう。しかもボードの乗り方を長めに描写するなど、この作品への丁寧な扱いかたが伝わってきます。
役者も、バラエティで有名な西村知美や定評のある小倉久寛を起用するところは年齢層に合わせたチョイスだということでしょうか。

この作品は前半で描かれる主人公・米倉一雄(いかにもな名前!)の心理描写にも注目しておきたいところです。行き場を失った男の悲しみが、痛いほど伝わってきます。ブランコのシーンもベタながら、身につまされるようです。親子関係にも自分なりに必死だったりと、その丁寧な描写でハッと息を呑むシーンがあることも強調しておきましょう。

一雄を理想のストーリーに沿わすか、現実のドラマを生きさせるか。映画という仮想世界だからこそ出来ることをちゃんとやったという意味で、監督の選択は間違っていなかったと思います。
これは、壮年期のサラリーマンへのエールだといえます。現代に生きる人々のための、解放と自己実現のストーリー。
[PR]
by murkhasya-garva | 2006-04-30 14:30 | 映画