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by murkhasya-garva
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ラストデイズ

「ラストデイズ」(2005)
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2005年カンヌ国際映画祭正式出品作品。グランジを代表する伝説のロックバンド、ニルヴァーナの一員であったカート・コバーンが人気絶頂時に自らの命を絶った。その最期の2日間を、コバーンの書物に着想を得、ガス・ヴァン・サントが映像化した作品。



ガス・ヴァン・サントの手がけた作品には「ジェリー」「エレファント」があります。今回の作品とつなげて、三部作的要素が指摘されています。「エレファント」はコロンバイン高校の銃乱射事件を描いた作品で、静かでそして哀しく、情景が胸に突き刺さるような出来となっています。この、観客の心情を鷲掴みにする独特な作風が印象に強く、にわかファンになったわけですが…。

本作品も、前作と同様に美しい情景描写と淡々としたイベントの連なりが特徴的です。このただただ気だるい空気を背負うのは多少なりとも苦痛なのですが、この監督にかかればそれが情感溢れるものになってしまうのだから、すごい。観た後に何とも哀しい気分にさせられるのです。フィクションよりもリアルで、現実よりも美しい。

ストーリーは説明的な言葉を排除し、カート・コバーンや友人たちの視点を使って断片的に、重層的に描かれます。この同じ時間軸を繰り返し、別の視点で描くという方法は、まさにコバーンが1人で各パートを作り、同じフレーズを繰り返しながら延々と音楽をかけ続けるシーンに重なってきます。しかも、各パートが一つ一つつぶされ、何事もなかったかのように曲は消え去ってゆく。曲の雰囲気は暗く、まさに彼の死を象徴するかのようです。

誰にも止めることのできなかった彼の死。同じ空間にいながら、各人の関わりはあまりにも薄いのです。ヤクでラリった友人との会話も、訪問販売員との会話も、必然的に希薄なものにしかなりません。彼自身もバンド仲間に会うのを恐れて逃げ回っていますし、1人でぶつぶつと何かを呟いているのを見ると、彼の「救いようのなさ」を痛感してしまいます。

彼の歌う曲中にこんな歌詞があります。「実が熟して 腐り 似ているね」。グランジというジャンルが鬱屈した感情を歌う傾向にあるというのもありますが、彼が人の死にゆく姿を歌ったかのような曲を死の直前に選ぶというのが、何とも象徴的というか。畳み掛けられるような感じです。
また、前作でもですが、死に近い者の傍で同性愛が行われるのが目を引きます。監督は、男たちが交わるという生産性の無さや、退廃的要素を「死」に投影したかったんでしょうか。

苦悩、孤独、絶望、不安、苦痛、これらの感情を見事に描き出す監督の文句ない一品です。「ジェイ&サイレントボブ 帝国への逆襲」によると(笑)監督は脚本作りに鬼のような遅さを発揮するそうですが、これだけの作品が観られるのなら、どれだけ遅くても別にかまいません。
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by murkhasya-garva | 2006-04-23 21:27 | 映画