休止中。


by murkhasya-garva
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

三年身籠る

「三年身籠る」
b0068787_1885783.jpg
西島秀俊、オセロの中島知子が出演するちょっと不思議な作品。もし3年間妊娠したら…というありえない設定のもと、現実感あふれる細かい設定で観客を引き込む。いかにも「ありそう」な思いにさせられて、何だか楽しい。




冬子(中島知子)は妊娠9ヶ月。もうすぐ母親になるという自覚がないまま10月10日を迎えようとしている。一方、夫の徹(西島秀俊)は浮気に忙しく、夜はビリヤードで恋人とデート。冬子は浮気に気付いているが、あきらめた様子。女系家族の末田家は、冬子がなかなか産気づかないのに結構のんびりしていて…。

京都シネマ、上映ラスト2日で観客はなかなかの大入り。しかも9割方は女性というのだから驚きです。少し肩身の狭い気がしましたが、なかなかどうして。映画を観ているときの楽しそうな反応がこっちまで伝わってきて、ほのぼの観ていました。

ありえない設定なのに何だか「ありそう」な気にさせられるのは、そこから積み重ねられる設定に無理がなく、鋭い視点で登場人物の細かな心情を汲み取っているからなんだろうな…、とそんなことを考えていました。いくつものフタの開かない容器を徹に開けてもらうシーンだとか、すこし大げさだけどやっぱり「ありそう」なネタがたくさん入っていて、所々で笑ってしまいます。

それにしても、三年間も妊娠していたら子供も中で育つんですね。中島知子のお腹を見るたびに「でっか!!」と言いそうになる。そりゃあのくらい大きかったら動けないよな。「育児をしなくてすむ」なんて冬子の母、桃子(木内みどり)は言う。そりゃそうだけど…。

妊娠27ヶ月の姿。誰も見たことがないからこそ、赤ちゃんがおなかの中で何をしようが、観ている側は決して否定できません。さらっと流されるシーンにぎょっとさせられることが何度かあるので、しっかり観ていたほうがいいです。その「ごく自然に」異常な感じがとてもいいんですよ。
それにしても、冬子をとりまく家族が、当然のようにその異常な状態を受け入れているのが何とも不思議な感じです。

この映画がキワモノ作品にならないのは、本来の目的がキワモノのそれとは違うからだと思います。キワモノなら、異常な人々や世界観を放り込んで、「どう?ヘンでしょ」と言わんばかりに観客を混乱させようとするでしょう。
しかしこの作品に限って各々の設定は、観客を驚かせるためではなく、大きなテーマを考えてもらうための潤滑油として働いているように感じます。オープニングのゴミ拾いだって、ただのシュール系ギャグではなく、妊娠時の感覚を言っているのでしょうか。

詳細はHPにありますが、監督は、子供を生むということ、育てるということの自覚について3年間の妊娠を想定したそうです。実際に時を追うごとに、家族は「家族らしさ」を身に付けていくのです。浮気をしていた徹は父親に、ぼんやりしていた冬子は母親に。
今の人間にとって10月10日の期間は、親になる準備をするには短すぎるのかもしれません。

そして、この作品を彩る脇役にも注目しておきたいところです。妹の緑子を演じる奥田恵梨華、そして恋人の海を演じる塩見三省。彼らは冬子夫婦のためにいるだけではなく、自分の人生をも展開させます。緑子の心情を上手く汲み取れないのが残念ですが、3年の妊娠の横で、彼女も自分自身を知ることが出来たのではないでしょうか。

一つ一つの設定に何かしらの意味があると思ってじっくりもう一度観てみたいものです。1回目は雰囲気を楽しむだけで十分でしょう。観てみる価値があります。とはいえ、なぜ女性がこんなに多かったのか分かる気がします。冬子を中心とした女性の心情は、男には理解しきれない・・・。
というか全然読み込めた気がしません。まだいっぱいあるのに。
[PR]
by murkhasya-garva | 2006-03-28 18:09 | 映画