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by murkhasya-garva
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ロバと王女

「ロバと王女」
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「シェルブールの雨傘」に続き、カトリーヌ・ドヌーヴ主演×ジャック・ドゥミ監督×ミシェル・ルグラン音楽で6年後に手がけられた作品。それをデジタル処理したということでしょうか。色彩に目を奪われること間違いなし。今回もミュージカル風に仕立てられた、何だか不思議なおとぎ話です。


とある国の王妃様が病に倒れ、王様(ジャン・マレー)に遺言を残した。「私よりも美しい人と再婚して…」なかなか相手は見つからない。侍従が最後に示したのは娘である王女様。王様は王女様に求婚するも、王女様が結婚に乗り気なはずもなく…

導入を見ても、何だか首を傾げたくなるような展開が待っているのです。どこかで見聞きしたことのある昔話にどこか似ている。でも所々でずれているというか、エキセントリックというか。まず結婚相手で娘を候補に挙げない!王様も惚れ直さない!どれだけ娘を見てこなかったんだか。
王女様も困って難題を出しますが、王様に叶えてもらう内にその気になるなよ、と。
でもこのあたりは、昔話に類型を探し出すことが可能なので、現代人の感覚とのズレと読んでおいてもいいのかも。

しかしもっと困ったことに、劇中でこんな言葉、アイテムが出現します。「電池」「電話」「ヘリコプター」・・・ここまでくると、分かっててやってる感が濃厚です。しかし配置の仕方があまりにさりげなく、当然のようになされているので思わず笑ってしまうんですね。そのいたずらぶりは、名付け親のリラの妖精のようです。「あら、そう?」と関心のなさそうにしておいて、こっちをちょっと振り返って口元で笑いそうな感じの洒落っ気で。
「昔」に「今」をあえて混入させることで、観る側の期待をいい感じに裏切ってくれます。つまりここが2つ目のズレ。

と同時に、昔話に期待する展開とのズレも確認できます。王女様は王子様が迎えにきてくれるもの、そう思っていないでしょうか。この作品では、むしろ王女様が(リラの妖精と組んで?)王子様をおびき出しているような感じにすらなります。王子様がくるのを分かっていて着飾ったり、お菓子に指輪を込めたり、と準備は万端。ヒロイン=受身を信じていると、王女様のアクティヴさをあざといと思う人も出るのかも。
そして、これはラストシーンでのリラの妖精にも同様のことが言えるでしょう。
この2人は作中で特に異彩を放っているのです。

そしてそれに振り回される周りの人物。恋に悩む王子様(ジャック・ペラン)。王子をわざわざ診察する医師団。城に集まる国中の女たち。彼らの行動もコミカルで、しかしそれを大真面目にやっているところが余計に笑えるのです。

注目すべきはその音楽、舞台。ここまでの大掛かりなジョーク(ここではあえてそう呼びます)を完成させるにはその外堀がしっかりしていないといけないようです。目の眩むようなカラフルさ。青や赤に塗られた人や動物たち。美しいデザインの豪華な衣装や道具、その徹底ぶりには思わずため息が漏れます。また変なアイテムも時折混ぜられていますので、突っ込み放題というオプションがもれなく付いてきます。
音楽も素晴らしい。主軸となる2曲がとても印象的です。インコが盛んに鳴きたてる歌「愛、そして愛」と、お菓子を作るときの歌「愛のケーキの作り方」。どちらも美しく、しかし現代的な雰囲気があるのか、なかなか記憶から離れてくれないインパクトの強さがあります。

原題は「Peau d’Ane」つまりロバの皮。王女様が逃げる際に身を隠し、自身がそう呼ばれたからなのですが(ここ辺りは「シンデレラ」=‘灰かぶり’に似ていますね)、当のロバ自体はそこまで作中で重要な役割ではない。単なるアイテムなのです。邦題の「ロバと王女」で期待し過ぎたのかもしれません。どうせなら「ロバの皮」を邦題にしても良かったようにも思います。

何だか病み付きになってしまいそうな不思議な作品。新解釈おとぎ話といった内容と、美しい音楽と舞台に酔いしれて下さい。話の元ネタを探ったり、作品の時代背景を考えるのもアリでしょうけど、まずは楽しむことから!ぜひ観てください。
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by murkhasya-garva | 2006-03-07 20:12 | 映画