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by murkhasya-garva
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キング・コング

「キング・コング」
b0068787_1721688.jpg「ロード・オブ・ザ・リング」の監督、ピーター・ジャクソンが作った超大作。1933年の原作リメイクで評価が高い。さほど乗り気でなかったのですが…。
実はこの作品の前に同監督のキウィ・ホラー「ブレインデッド」を見てしまい、あまりのありえなさに腰が砕けてしまったのです。こんな映画作る奴は絶対オカシイ。



アン・ダロウは運のない舞台役者。遂に勤めていた舞台のオーナーにも夜逃げされる。野心家で売れない監督は、次回作に見合う女優にアンを見初める。地図にもない謎の孤島での撮影を決行、一行はまだ見ぬ島へ漕ぎ出した。たどり着いた島で彼らが目にしたものは…

こりゃすごい。内容はシンプルなのに、密度の濃さはただものじゃない。3時間20分と相当な長尺だが、見るに堪えるだけの質の高さがあります。ストーリーのつながりを丁寧に描写しており、脳内補完の必要がありません。ヒロインであるアン・ダロウが監督に見初められるエピソードが個人的には好きです。

キャストにも注目です。女優アン・ダロウを演じるのはナオミ・ワッツ。ニコール・キッドマンから冷たさを抜いた柔らかい雰囲気。体を張った懸命な演技にとても好感をもてます。作家のドリスコルには「戦場のピアニスト」の主役を張ったエイドリアン・ブロディ。相変わらずの頼りなさが「文学者臭さ」にぴったり合っています。

CGの多用には往々にして危険なワナが潜んでいるものです。ストーリーテリングと映像技術の両立は難しいのでしょう。映像にこだわるあまりに大味な内容となった作品は数知れません。今回はCGの使用によって圧倒的な迫力を与えており、また緻密な映像により生き生きとした動物たちの動きが現実感たっぷりに映し出されています。特にキング・コングの表情の細やかさは見事と言うしかない。

それを支えるカメラワークもすごい。巨大な草食獣に追われ逃げ惑う乗船者の姿を映すのだけど、視点がテンポよく変わるためにパニック感が身に迫るように伝わってくる。突然開ける景色。草食獣の重みで崩れ落ちる断崖。誰が助かるか分からない状況で、あっという間に人が落ちてゆく。思わず息を詰めて見入ってしまいます。

そして最も冷酷なサバイバルシーンといえば、巨大昆虫との戦いです。異形の生物を前に必死に戦うわけですが、甲虫に見られるようなあの一種の無機的な姿や、軟体動物の生理的嫌悪感を催す姿が迫ってくるさまは本当に怖気が走ります。あえてBGMを抑えた薄暗いシーンで、人々のなす術のなさが恐怖感を煽ります。
巨大ムカデが目の前に、というのは個人的に一番気持ち悪い。耐えられず「ひ~」とか呻いてると、前のほうでも「うああ~」とか声が聞こえる。全く監督はいやなツボをよく心得ています。

演出もたいしたものです。孤島の砦を臨む場面で景色を大写しにして観客を一気に引き込む。一発の槍で原住民の襲撃の恐怖をじわじわと浸透させる。そして何よりも効果的なのがアン・ダロウの絶叫。うとうとしていても一発で目が覚める(笑

突っ込みどころもあるにはあります。ドリスコルはコングに追われた際に、ツタを使ってそもそもどこへ行く気だったのかとか、車で逃げる際にほうぼう回る必要性があったのかなど、いまいち掴めない。切迫した環境で思わず、とか偶然だった、と言うとお終いなんですが。とはいえそんな疑問を吹き飛ばすくらいに迫力があるから、特に目くじらを立てる必要もないのです。
でもまあ、コングに情を寄せたアンはこれから人間の世界でやってけんのか…とか勝手に心配してましたし、アンの汚れたドレスが途中できれいになってるのは流石に救いがたいとは思いましたけどね。

そもそもこの作品は「美女と野獣」を下敷きにしたものなんでしょうか。悲劇的な内容でとても纏まりの良い作品でした。作中のアホ監督の「兵器が野獣を殺したのではない。美女が野獣を殺したのだ」という間抜けな台詞を抜きにすればですが。お前が殺したようなもんだろ、お前が!!
ぜひ観てください。これこそ家族で観られる数少ないエンターテインメントです。
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by murkhasya-garva | 2006-02-15 17:30 | 映画