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by murkhasya-garva
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美しい夜、残酷な朝

「美しい夜、残酷な朝」
b0068787_17215285.jpgこの映画に惹かれたのは、香港、韓国、日本の3監督が手がけたオムニバスであり、そして出演にイ・ビョンホンや長谷川京子がいて、しかも作品の内容が結構えぐいらしいという噂を聞いたから(!)です。それにしてもやっぱ気になる映画はぜひ映画館で観たいものですね。。。


‘cut’:環境、才能に恵まれたリュ(イ・ビョンホン)は誰からも好感を受ける好人物。ある夜、帰宅した折に家で不穏な気配がする。バーナーの炎を浴び、目を覚ました時に見たのは…
‘box’:鏡子(長谷川京子)は冬の寒い町に住む小説家。彼女はいつも同じ夢を見る。幼い頃、父や双子の姉と過ごしていた頃の過ちに苛まれながら…
‘dumplings’:猥雑な住宅地。女優を辞めたリー(ミリアム・ヨン)は最高の餃子を求めにメイ(バイ・リン)のもとまでやってくる。その餃子は肉体を若返らせるという…

今回はタイトルのネーミングセンスが一役買っています。実は原題がどういうものか知らないんですが、邦題については詩的で、しかもその内容を端的に表しているようです。また各ストーリーがグロテスクだけでなく、「欲望」という人間の根源に関わるテーマを多角的に扱っているという点で非常に好感が持てます。

しかもこの長所はそれぞれの監督の特徴が十分に生かされたものであり(多分ね)、各人の得意技を扱ったものになっているのかも。
韓国の「cut」は、周りの「羨望」や「憎しみ」に曝されながら、リュ監督は極限状況に追い込まれてゆく。日本の「box」は、過去という悪夢、ゆがんだ愛情を抱く京子。
そして香港「dumplings」では人の浅ましい欲望を描き出します。
過去にこれらのネタは各国で多用されてきたことでしょう。(もっと言うと得意技、もとい副テーマはそれぞれの風土性に基づくものなのかもしれません)しかし今回はそれが洗練され、一貫したテーマを持って作られています。

それに安直なパターンに陥ることなく、登場人物の役割にそれぞれ意味を与えて内容を重層的にしている、というんでしょうか。そう思うと作品は面白さを増してきます。

特に面白いと思ったのは「dumplings」(餃子)。餃子の具が何かを分かっていて、なお若さを求める元女優の心境とは一体何なのか。若さを保つためには何でもする。体に異変が起ころうとも。その時点で彼女は人ならざる道を踏み出しているのかもしれません。
そしてメイとは一体何者なのか。人々に餃子を提供し、自分もその餃子を食べ、笑みさえ浮かべながら飄々とこの世を渡り歩く姿は、もう妖怪のようです。またそんな社会的背景とは?というかこのネタはどこから?都市伝説のようなストーリーは、この世の片側を見ている気にさせます。
何より直接表現がないのに注目です。適度に想像力で補わせ、異様な雰囲気を醸し出させます。料理でグチュグチャと立つ音。カットの連続による関連付けなど、とても効果的です。

三池崇史監督の「box」は他2作と比べ構成が少し違います。他の作品が時系列を辿ってるとすれば、これは記憶が複雑に絡み合い、夢と現実をない交ぜにした感があります。だからこそ、ラストのオチは、まさか!という気にさせられるんでしょう。
「cut」は複雑な要素を感じさせる2作品と一線を画し、ある意味ストレートな作品だとも言えます。追い詰められた人間の辿る末路を描くショッキングな内容となっています。また何が「カット」されたのか、それを考えるのも面白いでしょうね。

各作品が3作品中で独自の異彩を放っています。それぞれの持ち味を感じるだけでもこの作品は面白くなることでしょう。汲み取るところの多い作品として、この映画は質が高い作品と呼ぶことが出来るのかもしれません。もっとも、エグいのが嫌いな方にはあまりオススメはできませんが。
この作品を観た方の解釈をぜひとも読んでみたいものです。
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by murkhasya-garva | 2006-01-25 17:24 | 映画