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by murkhasya-garva
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いつか読書する日

ご無沙汰してます。時間もぼちぼちできてきました。
またできるだけ多くアップしてきますのでよろしくお願いします。

「いつか読書する日」
b0068787_0481593.jpg去年から観たいと思っていた作品。「オープニングから傑作の予感が・・・」という言葉に乗せられて、観にいったわけです。それに演技の上手い人が出るのはどんな作品でも観たいものですよね。
モントリオール世界映画祭で審査員特別賞受賞。



坂の多い小さな町で牛乳配達をする大場美奈子(田中裕子)は、日々を単調に過ごしてゆく。同じ町に住む高梨槐多(岸辺一徳)は病床にある妻の横で、毎朝美奈子が配達する牛乳瓶の音に耳を傾ける。三十年以上顔を合わせることのない二人は、ずっとお互いを想ってきたのだ…

こんなにも切ないラブストーリーは初めてかもしれない。
田中裕子の役作りが途方もなく良い。自ずと人を見つめるような眼差しの奥に秘めた強い意志。一見平凡な行動の中に確固とした信念を感じさせます。それに一つ一つの台詞が彼女の心の底から湧き上がっているようで。その真摯な言葉は見る者を揺さぶります。逆に彼女が動揺したときその平凡な行動は、糸がほつれるように、確かな崩れを見せるのです。

また岸辺一徳は、今まで仕事を冷静に遂行する事務職のイメージが強かったんですが、ここではその冷静な表情と裏腹に心の内の揺れるさまが強く表れています。病で死にゆく妻を看取りながら、それを打ち消そうとして一層仕事に身を入れようとする。しかし思わぬところで溢れる感情…。観ている者も締め付けられるような切なさに何ともいえなくなります。
もう、役者さんの魅力が随所にあふれ出していてそれだけでも感動してしまいます。本当に何気ない仕草に情感がこめられていて、彼らの人となりがよく分かる。それだけでもこの映画を勧める理由は十分なものです。

痴呆症にかかった真男を演じるのは「タナカヒロシのすべて」で父親役を演じた上田耕一。記憶が抜け落ちてゆく者のどこかしらうつろな表情が印象的です。彼の心中の言葉が、画面上に変形して表示されるのはユニークだなと思いました。

しかし、この映画の魅力は役者さんだけに限りません。「オープニングに傑作の予感」とは誇張ではないのです。小気味よい音楽と共に、美奈子が清冽な朝の空気を切って小さな町の坂を下るシーンは本当に美しい。狭い知見で申し訳ないですが、宮崎駿のアニメ「耳をすませば」の坂道のシーンに通じるところがあります。朝の光が現れようとする瞬間、それは人間の純粋でひたむきな心が最も映し出される瞬間なのではないでしょうか。

それに美奈子と槐多のラブシーン。これまた感動的なんです。「今まで思ってきたこと、したい」。お互いを分かってきた心の隔たりがここで一気に融解するのです。泣きそうになりました。こんなに切ないラブシーン、今までにあっただろうか。この二人があんなことやこんなこと(笑)をするのか…と想像すると興ざめなのであまり見たくなかったのですが、さにもあらず。というかそんなシーンはありませんでした。感動させるには初めだけで十分ですね。

静かな光景に、過剰でなく適度に配されたBGM。抑制された演技で溢れる人間性。静の中に感じる激しい動。そういうものもまた一層の共感を呼び起こすのかもしれません。とまだまだ言いたいことは沢山あるんですがともかく、今年度の最高作品はこれですね。これが日本映画だ、と自信を持って勧めたくなります。ぜひ観てください。ぜひ。
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by murkhasya-garva | 2006-01-21 00:55 | 映画