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by murkhasya-garva
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真夜中のピアニスト

「真夜中のピアニスト」
b0068787_20184868.jpgロマン・デュリス主演作品。ピアノ作品はここのところタイトルが似たり寄ったりになっているのが気にかかる。「ピアニスト」「海の上のピアニスト」「戦場のピアニスト」・・・一体どういう意図があるんだろうか。この作品はベルリン映画祭で銀熊賞(最優秀音楽賞)受賞、金熊賞ノミネートという輝かしい成績を引っさげてきた、にもかかわらず単館上映。


トム(ロマン・デュリス)は、父と同じ道を歩むように不動産業の裏ブローカーとして生きている。ある日昔のピアノの恩師に再会し、よみがえる情熱から再びピアノを志す。しかし10年間置き去りにされてきた才能は錆び果て、残ったものはピアノへの甘い憧憬ばかりだった。紹介された教師はフランス語が話せないピアニスト。不動産業から足を洗おうとするもさらに多くの困難が立ちはだかる・・・。

「若い」ことは、何かしら人間に魅力を与える格好のアイテムとなるようです。少年時代はとうに過ぎたと思っていても、昔から成長することなく残っている部分がある。しかし現実はその「若さ」を残した者にも容赦はない。思うように上手くいかず、葛藤し平静さを失うトムを、デュリスはとても繊細に演じているようです。

老いて弱くなった父が、昔の強く独断的な面影を失い、自分を「ダチ扱いしやがる」。そのやるせなさに思わずいら立ち、悲しみ、過去の幻影にしがみつこうとする姿も、ピアノに再び向かい合う機会を得、昔を取り戻すように没頭する姿も、根っこでは同じものを感じさせます。若々しい頃の自分を消化することが出来ず、今になって、無責任にも当時への甘いあこがればかりが彼をひきつけてやまないんでしょう。

しかし、トムのピアノへの打ち込みようは何ともいじましく映る一方で、美しささえ感じます。仕事の直後にもピアノ、女と寝てもピアノ。純粋でひたむきな想いは、時に思うように弾けずいら立ちを爆発させるものの、途切れることがない。ピアノへの姿勢というのは、ある意味別格でストイックです。いままで描かれてきたピアニストの映画(「シャイン」「海の上の~」「戦場の~」など)も、現実世界と葛藤しながらもピアノへの気持ちだけは相も変わらず純粋な人々の姿を映し出しています。

音楽がとても効果的に配置されています。トムが1人のときは必ず音楽を聴く。ブローカーのときはもっぱらエレクトロ。ピアノとトムとを敢えて切り離そうとするアイテムのようです。そして終始練習し続けるバッハのトッカータホ短調。上手くなっていく様子が映し出されるのは感動的でもあります。
かつてピアノを弾いていた人には、この気持ちが強く伝わってくるんじゃなかろうか。青春映画として、見事に揺れる心が描かれています。だてに金熊賞ノミネートされてないと思うんですが。
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by murkhasya-garva | 2005-12-16 20:19 | 映画