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by murkhasya-garva
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勝手にしやがれ

勝手にしやがれ_b0068787_18334529.jpg映画の神様、と言われるジャン・リュック・ゴダール。彼の作る映画は難解との声高く、彼の作品をめぐる映画論は数多く存在している、はず(そんなに知らない)。ぼくは今まで何本か観て、寝なかった作品はありませんでした。分かんないんだもん。
まあゴダールの名前しか知らないようなミーハーの感想だと思って読んでください。
それで今回勇気を振り絞って行ったのが京都みなみ会館のゴダール・セミナイト。いったいどこまで意識を保ってられるだろうか。


タイトル「勝手にしやがれ」は、初頭で主人公が口にする「海が嫌いなら、山が嫌いなら、都会が嫌いなら、勝手にしやがれ」という台詞からきているようです。自分の唇を指でなぞる癖のある主人公。彼はいつものように女を引っ掛け、車を盗んで乗り回します。そこで再会するアメリカの女――。

ジャン=ポール・ベルモンド演じるミシェル・ポワカールは美男子というわけでもないのに、やけにスタイリッシュというかカッコつけで、いちいち行動が目を引きます。当時の若者をなぞったのかも。彼の行動の奇矯さは後々までこの作品の注目点になっています。また、彼と共演するジーン・セバーグがとても美人です。顔立ちがオードリー・ヘップバーンによく似ている(それしか知らない)。短髪だからかいっそう魅力的。
必要以上に言葉を介そうとしない会話がとても印象的。
目的地に向かうのか、車で行く途中、「乗せて」「何時?」「11時10分前」「あばよ」・・・驚きましたが、これだけで十分に意味は通じるんですね。昔のカッコいい言い回し、というのに近いのか?

ミシェルのある種の勝手気ままさ、思い付きの行動がカミュの「異邦人」の主人公、ムルソーの不条理さと重なります。そういえば昔から、年長者は、若者が理解できない、近頃の若い者は・・・といって嘆く。つまり若者の不条理さは、1つ、2つ上の世代とは共有しがたい感覚から指摘されることなのかも知れません。でも、そのいわゆる「不条理」はいつしかその社会の本流になっていないでしょうか。そしてまた新たな「不条理」が次世代の若者から発生する。替わりゆく世代。
もっとも、このときゴダールは29才。主人公と殆ど同じ年齢なわけです。老人の視点から描いたとは必ずしも言えませんし、そもそも不条理のつもりで描いたのかどうかすら。それに、主人公はムルソーよりもこだわりを持って、いわば哲学的に考え行動しているところがあります。もっと言えば彼の美学なんでしょうか。パトリシア(ジーン・セバーグ)が現れてからは愛が基調になるように。

でもそんな直感を裏付けるような点があります。ゴダールの作品によくあるのですが、心情や状況の変化で音楽をいきなり挿入します。いやな予感、だったら不安を掻き立てる音楽を、というふうに。この作品では、シリアスモードに入るとよくコミカルな音楽が流れます。まるで彼らの行動を一歩引いて見ることで喜劇のように扱っているようです。
ラストの撃たれてよろけるシーンなんて最たるもの。あれじゃコントだよ。どう見てもラブストーリーとはいえないよな。

ゴダールは当時の若者像を自ら描き出そうとしたんでしょうか。いわゆる青春映画というジャンルに入りそうです。彼の作品の中では比較的見やすい作品だったように思います。
by murkhasya-garva | 2005-12-10 18:38 | 映画