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by murkhasya-garva
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空中庭園

「空中庭園」
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角田光代原作、小泉今日子主演の小説を映画化。小説、マンガの映画化は本当に多いですね。さて今回は空中庭園をめぐる事件があったそうで…監督が逮捕されたそうです。





ともかく、この作品自体は事件のどうこうに関わらず、回収したりなんかしなくて正解でした。空虚な家族関係、それを「何の隠し事もしない」ことを信条に形作ってきた家族からあぶりだそうという試みのようです。
出演は小泉今日子、板尾創路、鈴木杏、、大楠道代、ソニンなど。

「我々は、何ごともつつみかくさず・・・」
家族の間では隠し事は一切しないことが家族の決まり。のっけから自分が命を授かることになった場所「出生決定現場」を聞くところから始まります。引くわ。小泉今日子演じる京橋絵里子は何のためらいもなくにこやかに答えるんですが・・・。

はじめからそんな光景、ある種とても危ういバランスの上に立っているように見えます。彼女はどんなときでも「完璧な笑顔」。標準語を使う板尾創路。遠くをうつろに眺める家族。そして、ゆっくりと振り子時計のように揺れて彼らのうつろな顔が映し出される。オープニングからこの家族の不安定さを感じさせるわけです。

まず何といっても絵里子の満面の作り笑顔が危うい。不気味です。彼女が家族を完璧にしようとすればするほど、その不自然で無理な試みは彼女自身と共に内部から崩壊している感じです。「あなたたちを1人で家に帰らせたくないの」。絵里子のいっていることは当然なんだろうだけど、その言葉をぬけぬけと言うことの何と空々しいことか。

絵里子の母、さっちゃん(大楠道代)や家庭教師のミーナ先生(ソニン)が外側からその不自然さを突き崩そうとしますが、なかなか簡単には壊れない。特にさっちゃんが元気すぎ。娘とは正反対の明るさで立ち回ります。ガンだというのにあの元気さはないだろう。あんなばあちゃんがいたら楽しいだろうに。ミーナ先生も、この家族が不自然だとうすうす感づきながらキツネっぷりを見せています。彼女の役柄が少し薄いのでどうこう言うのはあれですが、ゲロ吐く瞬間は、うまい!と思いました。

そういえば大楠道代は「赤目四十八瀧心中未遂」のセイ子姉さん役を演じきっていました。どちらも舌鋒厳しい女性の役ですが、カッコいい。何を企んでいるのかそっけない表情で、この現実世界を自分なりに見切って立ち振る舞っている様子が、とてもかっこよくて印象的です。

秘密を作らない、ということ自体が無理なんです。父親の「セフレさん」に言わせれば「人間を人間たらしめているのは恥」です。隠さない、隠せないということがどれほど危ういことなのか。周りの人間のセリフは彼らのボロを次々と浮き彫りにしていきます。そもそも普通の人間が秘密を作らないのは不可能です。その上で秘密を作らない、と宣言しているのは、既に大きな嘘、秘密を公然とついているようなものです。その大きな嘘を一手に引き受け、思い込もうとしている彼女がまともな神経でいられるはずもない。この作品では、最後に彼女はその重責から逃れることが出来ますが、それまでの彼女の壊れっぷりは必見です(個人的には壊れたところで終わっても良かったと思うのですが)。あの人がこんな汚れ(?)役まで演じるとは・・・。鬼気迫るものがあって鳥肌が立ってきます。
少し老いを感じさせるようになった小泉今日子。新たに演技の幅を広げたということでしょうか。

よく出来た作品です。こういう映画こそたくさんの人間が見るべきなんじゃないのか。小泉今日子はこの作品で第18回日刊スポーツ映画大賞の主演女優賞を受賞。ファンでなくても観るべき。
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by murkhasya-garva | 2005-12-09 18:08 | 映画