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by murkhasya-garva
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イサム・カタヤマ=アルチザナル・ライフ

『イサム・カタヤマ=アルチザナル・ライフ』(2009)
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久しぶりに東京で映画を鑑賞。最新作か関西圏では上映されなさそうな作品をと思い、今回まず挙げたいのはこの作品。レザーブランドBACKLASHのデザイナー・片山勇のドキュメンタリー。





何の理由もなくこの映画を選んだつもりだったけど、少なくとも僕にこの映画を見る理由はいくつかあった。
・見る直前に気付いたこと。弟がアパレルに勤め、抽象的ながら気骨のあるコメントをするようになった。店の先輩から学んだものがいったいどんなものかは関心があった。
・見ている途中に気付いたこと。せめて自分の好きな映画では、世界を閉じてはいけないということ。関心は常に開かれたものでありたい。
・ラストで気付いたこと。それは、自分のやっていることが本当に実を結ぶのか、という迷いをいつも抱えている自分にとって、これは一人の男の姿から生き方を教えてくれる作品だった。

おそらく、この作品は僕にとって忘れてはならない作品なのだ。その決意めいた思いは僕の胸に突き刺さるようだった。上の3つの理由だけで本作の感想は言い切ったようなものだけど、以下ではあらためて本作を振り返りたい。

精神的なことを語る場面が非常に多い片山勇氏。一番はじめに、彼が次々と口にするキーワードは、僕が想像していたのもあって「決意」、それも“悲壮”な「決意」をしてきた者の言葉のように思われた。それに「孤高のサムライ」と呼ばれ、職人気質をもったデザイナーというと、なんだか無口で気難しい男を想像してしまう。
しかし、本作で登場するのはいつも笑顔でよくしゃべる、顔だけ見るとヒッピー風の男。

片山氏を表現するに、重要なワードは「直観」「笑顔」「自信」だろうか。彼の言葉は抽象的で断片的なために初めは特に何を言っているのかあまり分らないが、言葉が重ねられるごとに片山氏の信念は、鮮やかで透き通った水晶のように顕れてくる。そして彼を映し出すのは、彼を慕う仕事仲間。彼らはスーパーブランドのプロデザイナーとしてではなく、彼の人柄そのものの魅力を慕っているようだ。

誰とも対等に、自信を持って相手に向き合い、しかしいつも笑顔で核心を突いてくる片山氏。「仲間」「人を信じる」、そんな言葉と同時に、「くやしい」「情けねんだよ」「愛されたい。この年になっても」と切れ切れに吐露される身をよじるような切ない思い。若い頃には迷ったであろう彼の根底には、激しく揺るぎない熱意といつまでも自分の夢、ロマンを追い続けられる強さ、そして他の人間への深い信頼がある。「おれのこと好きだろ?」相手のことをまっすぐに見つめ、そう言える人がこの世にどれだけいるだろうか。

では、ぼくはどうだろう。やりたいことがあるのに形にならないもどかしさ、自分の経験の少なさ、自信のなさが、歩みを遅くする。もしかして同じことを誰かが既に言っているのでは――と考えると、書くスピードが途端に鈍ってしまう。
彼のようになりたい。自信を持って、相手に自分のことを示せるように。ラストあたりのカットで、片山氏の妻と息子とで砂浜に立つ姿が映ったとき、思わずグッとなってしまった。

この映画は、単なる内輪受けの作品なんかではない。20~30代の男性は特にご覧になってほしい。渋谷のライズXで上映中。ソフト化されないかもしれないから、この機にぜひ!!
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by murkhasya-garva | 2009-08-13 17:04 | 映画