少年メリケンサック
2009年 07月 09日
少年メリケンサック(2009)
今朝、たまたま思い出したので感想を少々。。。
唯一、宮藤官九郎がらみの作品で面白かったのは『アイデン&ティティ』だ。他にもあるかもしれない(『鈍獣』も観てない)が、こんなに胸を打たれた作品はなかった。じゃあ他の作品はどうなのか、というと、登場人物もだけど色々なものがしょぼ過ぎて感動にまで行きつかない、という感じ。この宮藤と言う脚本家のハナシは基本的に小さいのだ。彼の話のなかで登場人物はたいてい大暴れするけれど、彼らの生活範囲を出ることはない。そしてたいてい悩みを持っているのだけど、すごく個人的で、しかもその悩みは「負け犬」――失敗者、挫折者、敗北者のものだったりする。あまりにも痛々しすぎて、そして彼らの悩みはろくに解決されずラストを迎えるあたり、妙にリアルなものだから見ている側は全然スッキリしないのだ。最後にこちら側に残されるのは、こちらの不完全燃焼な思いと宮藤という脚本家はプロとしてきっちりまとまった仕事をしている人だよね、という、場違いな評価くらいだ。
この作品も『青春☆金属バット』だったか『青春♂ソバット』だったか、タイトルがすぐに思い出せない…とにかく宮崎あおいがポスターでロックな格好をしていて、劇中歌の『アンドロメダおまえ』だけがものすごい存在感とインパクトを持っていたのは印象に残っている。なんか、いろいろ埋もれてしまう作品だ。
本作に出てくる小汚いオッサンたちは昔ロックで鳴らした人たちで、でも今はそれぞれ本当に小さくなってしまった人たちばかり。それをネットで現役のバンドだと勘違いしたレコード会社の宮崎あおいが全国ツアーを組むが、本人たちを見てガッカリの宮崎あおい、そして散々な目にあう中年男たち。結構などん底の挫折にたたき落とされ、オッサンたちもたまにはブチ切れてみるけれど、それでも自分たちの世界を突き抜けられないところがむしろ泣ける。少なくとも宮藤ワールドでは、ブチ切れて奇行に走るのはほぼ予定調和にしか見えないし。
しかし小ネタに関しては秀逸だ。あたり一面にちりばめられたスラップスティックな小ネタにはいちいち笑わせられる。そのおかげで各キャラのインパクトは十分にある。けれども、結局みんなあんまり報われないんだな。救われないのだ、最後まで。「まあこれも物語の一つのパターンってことで」などと勝手にまとめるとスピードウェイ(「アイデン&ティティ」の)の面々にどつかれそうだけど、じゃあそれ以外どうしろって言うんだよ。この不完全燃焼感をどこにやればいいんだ?
とはいえ宮藤ワールドのいいところは、“みんな夢をかなえてハッピー”とかいう普通の予定調和を確実に外してかかる点かもしれない。わざわざ低空飛行と言う一番溜飲の下がらないイライラするラインを取り続けているのも、ある意味さすがだ。別に特集されても観ようとは思わないが、たぶん、おそらくだけど、登場人物と同じ世代になったとき、ものすごいピンポイントなタイミングで宮藤作品てのはツボに来るような気がしてならない。それこそ『アイデン&ティティ』のように。なんかやだなあ。
今朝、たまたま思い出したので感想を少々。。。
唯一、宮藤官九郎がらみの作品で面白かったのは『アイデン&ティティ』だ。他にもあるかもしれない(『鈍獣』も観てない)が、こんなに胸を打たれた作品はなかった。じゃあ他の作品はどうなのか、というと、登場人物もだけど色々なものがしょぼ過ぎて感動にまで行きつかない、という感じ。この宮藤と言う脚本家のハナシは基本的に小さいのだ。彼の話のなかで登場人物はたいてい大暴れするけれど、彼らの生活範囲を出ることはない。そしてたいてい悩みを持っているのだけど、すごく個人的で、しかもその悩みは「負け犬」――失敗者、挫折者、敗北者のものだったりする。あまりにも痛々しすぎて、そして彼らの悩みはろくに解決されずラストを迎えるあたり、妙にリアルなものだから見ている側は全然スッキリしないのだ。最後にこちら側に残されるのは、こちらの不完全燃焼な思いと宮藤という脚本家はプロとしてきっちりまとまった仕事をしている人だよね、という、場違いな評価くらいだ。
この作品も『青春☆金属バット』だったか『青春♂ソバット』だったか、タイトルがすぐに思い出せない…とにかく宮崎あおいがポスターでロックな格好をしていて、劇中歌の『アンドロメダおまえ』だけがものすごい存在感とインパクトを持っていたのは印象に残っている。なんか、いろいろ埋もれてしまう作品だ。
本作に出てくる小汚いオッサンたちは昔ロックで鳴らした人たちで、でも今はそれぞれ本当に小さくなってしまった人たちばかり。それをネットで現役のバンドだと勘違いしたレコード会社の宮崎あおいが全国ツアーを組むが、本人たちを見てガッカリの宮崎あおい、そして散々な目にあう中年男たち。結構などん底の挫折にたたき落とされ、オッサンたちもたまにはブチ切れてみるけれど、それでも自分たちの世界を突き抜けられないところがむしろ泣ける。少なくとも宮藤ワールドでは、ブチ切れて奇行に走るのはほぼ予定調和にしか見えないし。
しかし小ネタに関しては秀逸だ。あたり一面にちりばめられたスラップスティックな小ネタにはいちいち笑わせられる。そのおかげで各キャラのインパクトは十分にある。けれども、結局みんなあんまり報われないんだな。救われないのだ、最後まで。「まあこれも物語の一つのパターンってことで」などと勝手にまとめるとスピードウェイ(「アイデン&ティティ」の)の面々にどつかれそうだけど、じゃあそれ以外どうしろって言うんだよ。この不完全燃焼感をどこにやればいいんだ?
とはいえ宮藤ワールドのいいところは、“みんな夢をかなえてハッピー”とかいう普通の予定調和を確実に外してかかる点かもしれない。わざわざ低空飛行と言う一番溜飲の下がらないイライラするラインを取り続けているのも、ある意味さすがだ。別に特集されても観ようとは思わないが、たぶん、おそらくだけど、登場人物と同じ世代になったとき、ものすごいピンポイントなタイミングで宮藤作品てのはツボに来るような気がしてならない。それこそ『アイデン&ティティ』のように。なんかやだなあ。
by murkhasya-garva
| 2009-07-09 11:00
| 映画